2017年7月3日月曜日

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「あら、あなたとお別れするのが嬉しいというわけじゃございませんのよ、もちろん違いますわ」ふいにやさしい社交的な微笑をたたえて、訂正するかのように彼女は言いました。「あなたのようなお友達が、そんなことをお思いになるはずはありませんわね。それどころか、あなたを失うなんて、あまりにも不幸すぎますわ(彼女はいきなりイワンのところに走りより、両手をとると、熱烈な思いをこめて握りしめた)。嬉しいというのは、こういうことですの。つまり、今あなたがモスクワにいらっしゃれば、叔母やアガーフィヤ姉さんに、あたくしのこんな状態を、今のあたくしの恐ろしさを、あなたご自身の口から、じかに伝えていただけるでしょう。アガーフィヤ姉さんには何もかもありのままに、叔母にはあなたにおできになる範囲で適当に匙加減していただいて。あなたには想像もつかないでしょうけれど、あたくし、叔母たちにこの恐ろしい手紙をどう書いたものかと思い悩みながら、昨日から今朝にかけて、それは不幸な気持でしたのよ・・・・だって、こんなこと手紙では、どうやったって絶対に伝えられませんもの・・・・でも今度は、あなたが向うで何もかもじかに説明してくださるでしょうから、手紙を書くのも楽になりましたわ。ああ、ほんとに嬉しい! でも、嬉しいのはそのことだけですわよ、信じてくださいましね。あなたご自身は、あたくしにとって、もちろんかけがえのないお方ですもの・・・・じゃ、今すぐ行って、手紙を書いてきますから」

この「カテリーナ」の発言もひどいものですね、本当は自分のことだけしか考えてないのがわかります。

「カテリーナ」が「嬉しい」と言ったのは、自分が手紙をうまく書くのが面倒なので、「イワン」が口頭で伝えてくれるからです。

しかし、「イワン」としては、走りよって、両手をとって、熱烈な思いをこめて握りしめられれば、愛するものとしては勘違いしがちですね。

突然こう結ぶと、彼女は部屋を出るため、すでに一歩踏みだしさえしました。

「でも、アリョーシャが? アレクセイ・フョードロウィチの意見を、ぜひききたいとおっしゃってたじゃありませんか?」

「ホフラコワ夫人」が叫びました。

その言葉には、棘のある腹立たしげな調子がひびいていました。

わたしもこのままだと「カテリーナ」が「アリョーシャ」のことを無視しているんじゃないかと思っていましたので、ここでの「ホフラコワ夫人」の発言は我が意を得たりという感じでした。

「あたくし忘れていませんわ」

ふいに「カテリーナ」は足をとめました。

言葉では「忘れていません」と言っても忘れていたのだと思いますが、仮に本当に忘れていなければ、「アリョーシャ」を無視する失礼な行為ということになります。

また、本当は忘れていたのなら、咄嗟の嘘になります。

「それに、なぜこんなときにあたくしをそれほど敵視なさるんですの、奥さま?」

悲痛な、熱っぽい非難をこめて、彼女は言いました。


「ホフラコワ夫人」は「カテリーナ」に忠告したのであり、これを「敵視」と言うこと自体が自分の嘘を自分では知っていてそういう虚偽の態度をとったことを認めることになるのではないでしょうか。


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