「そして、まわりの人を苦しめるんですね」
「アリョーシャ」が微笑しました。
「そして、まわりの人を苦しめるんです、特に母を。カラマーゾフさん、言ってください、今の僕はひどくこっけいですか?」
「そんなことを考えるのはおやめなさい、全然考えないことです!」
「アリョーシャ」が叫びました。
「それに、こっけいがどうだと言うんですか、人間なんて、いったい何度こっけいになったり、こっけいに見えたりするか、わからないんですよ。それなのに、この節では才能をそなえたほとんどすべての人が、こっけいな存在になることをひどく恐れて、そのために不幸でいるんです。僕はただ、君がそんなに早くそのことを感じはじめたのに、おどろいているんですよ。もっとも、僕はもうだいぶ前から、そういうのが君だけじゃないことに気づいていましたけどね。この節では子供にひとしい人たちまで、その問題で悩みはじめてますよ。ほとんど狂気の沙汰ですね。悪魔がそうした自負心の形をかりて、あらゆる世代に入りこんだんです。まさしく悪魔がね」
「この節では子供にひとしい人たちまで、その問題で悩みはじめてますよ」という部分はよくわかりませんでした、前に「コーリャ」の会話の中ででてきた「・・・・僕はとても不幸なんです。僕はときおり、みんなが、世界じゅうの人間が僕を笑っているなんて、とんでもないことを想像するんですよ、そうすると、ただもういっさいの秩序をこわしたい気持になるんです」ということなのでしょうか、つまり自分と世界の疎外感のようなことでしょうか。
ひたと見つめていた「コーリャ」がふと思いかけたのとは違って、「アリョーシャ」はまるきり笑いを見せずに付け加えました。
「君もみんなと同じですよ」
「アリョーシャ」はしめくくりました。
「つまり、大多数の人と同じなんです。ただ、みんなと同じような人になってはいけませんよ、本当に」
「みんながそういう人間でもですか?」
「ええ、みんながそういう人間でも。君だけはそうじゃない人間になってください。君は事実みんなと同じような人間じゃないんだから。現に君は今、自分のわるい点やこっけいな点さえ、恥ずかしがらずに打ち明けたじゃありませんか。今の世でいったいだれが、そこまで自覚していますか? だれもいませんよ。それに自己批判の必要さえ見いださぬようになってしまったんです。みなと同じような人間にはならないでください。たとえ同じじゃないのが君一人だけになってもかまわない、やはりああいう人間にはならないでください」

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