2018年12月16日日曜日

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「ふん、なんて愚劣なんだ!」

「イワン」は叫びました。

「ねえ、君、僕は君を笑わせたかっただけなんだ。しかし、ほんとのことを言うと、これこそ正真正銘のイエズス会の詭弁なんだよ。誓ってもいいが、一字一句、今僕が話したとおりだったんだからね。この最近の出来事が、ずいぶん僕に手数をかけさせたんだ。なにしろ、不幸なその青年が家に帰ると、その夜のうちにピストル自殺をしちまったんで、僕は最後の瞬間までつききりだったのさ・・・・イエズス会の懺悔室と言や、あれこそ本当に心ふさぐときの僕のいちばん楽しい気晴らしなんだよ。もう一つの出来事を話してあげよう、つい二、三日前の話さ。年寄りの神父のところへ、二十歳くらいのブロンドのノルマン娘がやってきた。器量といい、身体といい、気立てといい、ふるいつきたくなるような娘さ。娘は身を乗りだして、小窓ごしに神父に自分の罪をささやいた。『何ですと、わが娘よ、それじゃまたふしだらなことをしたんだね?』神父が叫んだ。『ああ、サンタ・マリヤさま、何ということだ。今度は違う相手とだって。それにしても、いつまでこんなことがつづくんだね、よく恥ずかしくないものだ!』『まあ、神父さま』罪深い娘は後悔の涙をうかべて答えたんだ。『あの人はとても喜びますし、あたしだってそれほどつらくはありませんもの!』ええ、どうだい、この返事は! これには僕も負けたよ。これは自然そのものの叫びだ、これはもう純潔よりもっと立派だよ! 僕はその場で娘の罪を赦して、帰ろうとしかけたんだけど、すぐさま後戻りせざるをえなくなったんだ。だって、神父が小窓ごしにその娘と今夜のあいびきを取り決めているのが、きこえたからさ。一徹者の老人が、たった一瞬で堕落しちまったんだからね! 自然が、自然の真実が勝ちを制したんだ! どうしたい、またそっぽを向いてるね、また怒ってるのかい? どうすれば君の気に入るのか、わからないよ・・・・」

ピストル自殺したその青年というのは「鼻欠けになったさる侯爵」のことだと思うのですが、妙に話が繋がりませんね、この話はイエズス会の懺悔室の話なんでしょうが、悪魔は「最後の瞬間までつききり」だったと言っていますから、ピストル自殺をほのめかしたのは悪魔なんでしょうか、ブロンドの娘の話は何が言いたいのでしょうか、老神父の堕落は悪魔がささやいたためではなく、自然の真実が勝利したということになっていますが。

「放っといてくれ、お前はしつこい悪夢みたいに、俺の頭の中をたたくんだ」

自己の幻影に対する無力感に包まれて、「イワン」は病的に呻きました。


「お前の相手は退屈だ、堪えられないほど苦痛だよ! お前を追い払うことさえできたら、礼ははずむんだがな!」


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