2016年12月1日木曜日

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七 出世主義者の神学生

「アリョーシャ」は長老を寝室に連れてゆき、ベッドに掛けさせました。

長老の寝室はごく必要な家具だけを配した非常に小さな部屋でした。

狭いベッドは鉄製で敷布団の代りにフェルトが一枚敷いてあるだけでした。

片隅の聖像のわきには経卓が置かれ、その上に十字架と福音書がのっていました。

長老は力なくベッドに崩折れました。

目がかがやき、呼吸も苦しげでした。

すっかり腰をおろすと、彼は何か思いめぐらすように、まじまじと「アリョーシャ」を見つめました。

そして、自分のことなら「ポルフィーリイ」でも間に合うから急いで院長さまのところへ行きなさい、お前は向うで必要な人間だから行くがよい、院長さまのところへ行って食事の給仕をしてきなさい、と言いました。

「ポルフィーリイ」という名前ははじめて出てきましたが、庵室で「アリョーシャ」とともに長老に脇にいた見習い僧ですね。

「アリョーシャ」は、「どうか、このままここにいさせてください」と哀願するような声で言いました。

「お前は向うでいっそう必要な人間なのだ。向うには和がないからの。お前が給仕をしていれば、役に立つこともあろう。諍いが起ったら、お祈りするといい。そして、いいかね、息子や(長老は彼をこう呼ぶのが好きだった)、将来もお前のいるべき場所はここではないのだよ。これを肝に銘じておきなさい。わたしが神さまに召されたら、すぐに修道院を出るのだ。すっかり出てしまうのだよ」と長老は言った。

長老の言う「お前のいるべき場所はここではない」という言葉は意味深長ですね。


これはどういうことでしょうか。


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