「ほら来た、ほら来たぞ!」と、「フョードル」は「アリョーシャ」を見るとふいにひどく喜んでわめきたてました。
そして、「仲間入りして、座れや。コーヒーはどうだ、精進用のミルクぬきのやつでも。ミルクぬきでも、熱くてうまいぞ!コニャックはすすめんよ、お前は精進中の身だからな、でもほしいか、飲むかい?いや、お前にはリキュールのほうがいい、極上品だぞ!おい、スメルジャコフ、戸棚から持ってきてくれ、右側の二段目にある。ほら鍵、早くしろ!」
「アリョーシャ」はリキュールを断ろうとしかけました。
「どのみち、出すんだよ、お前のためにじゃなく、俺たちのためにな」と「フョードル」が顔をかがやかせました。
そして、「待てよ、お前、昼飯は食べたのか、どうなんだ?」
「すみました」と「アリョーシャ」は言いましたが、本当は修道院長の台所でパンを一片食べ、クワスをコップ一杯飲んだだけでした。
「ホット・コーヒーなら、喜んでいただきます」
「えらいぞ!でかした!コーヒーを飲むとさ。暖めんでもいいかな?いや、とんでもない、今でも煮立ってる。コーヒーは上物だぞ、スメルジャコフ式のな。コーヒーとピローグにかけちゃ、うちのスメルジャコフは名人だよ、それから魚スープとな。そのうち、魚スープを食べにこいや、あらかじめ連絡しておいて・・・そうだ、待て、待てよ、さっき俺は、今日のうちに布団と枕をかついで、すっかり引き払ってこいと、お前に言いつけたはずだぞ?布団をかついできたか?へ、へ、へ!」
「いいえ、持ってきませんでした」と「アリョーシャ」も苦笑しました。
何時間か前は修道院で大騒ぎしていた「フョードル」ですが、そんなことはすっかり忘れてしまったかのように大人気なくはしゃいでいますね。
これは「アリョーシャ」が大好きということもあるでしょうが、もともともてなすのが好きなんでしょう。
そして、「アリョーシャ」の昼ごはんのことまで気配りしています。
また、この頃は戸棚に鍵がかかるようになっているのですね。
今はそのような戸棚はあまりないと思いますが、当時の戸棚の様子はわかりませんが、いちいち鍵までかけていたのですね。
ピローグという料理のことが出て来ますが、これはいわゆるピロシキのことではないようです。
ネットでみると「ピロシキの親分のピローグについてお話しを戻しましょう。ピローグは、ピロシキと違って焼いたものしかありません。30センチ以上の大きさがありますから、そもそも油で揚げるのは厳しいですね。具はピロシキと同じように多様で、ジャムや果肉のピローグは、一見するとパイのように見えます」という記事がありました。
写真で見てもパイそのものですね。
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