「いや、彼女は今日は来ないよ、思い当る節があるんだ。きっと来ないとも!」と突然「ドミートリイ」は叫びました。
そして「スメルジャコフもそう見てるしな。親父は今ごろ酔払って、イワンと食卓をかこんでるさ。アリョーシャ、行って、親父に例の三千ルーブルを頼んでくれよ・・・」
「兄さん、ねえ、どうしたんです!」と「アリョーシャ」は席からとびあがり、錯乱したような「ドミートリイ」を見つめながら、叫びました。
一瞬、「アリョーシャ」は「ドミートリイ」が発狂したかと思いました。
一体どうしたのでしょう、「ドミートリイ」は情緒不安定で挙動不審なところがあるようですが、ここではどのような行動をとったのかは書かれていません。
そして、「ドミートリイ」も「スメルジャコフ」も今日は「グルーシェニカ」が来ないと思っている理由もここでは書かれていません。
「ドミートリイ」は「グルーシェニカ」が来ないだろうということについて「スメルジャコフもそう見てるしな」と言っています。
「スメルジャコフ」は「フョードル」の召使としては、この時点で背信行為をはたらいているわけで、また彼は恐らくというかほぼ確実に「フョードル」の息子であり、「ドミートリイ」とは兄弟ということになるのですが、そうすると兄弟で父親に反抗していることになります。
「なんだい?べつに気がふれたわけじゃないぜ」と「ドミートリイ」はまじまじと、なにか厳粛ですらある顔で見つめながら言いました。
そして、「心配するな、お前を親父のところへ差し向けはしても、俺は自分が何を言ってるか、ちゃんと承知しているんだから。俺は奇蹟を信じているのさ」
「奇蹟を?」
「神の思召しの奇蹟をさ。神さまは俺の心をご存じだ、俺の絶望をごらんになってらっしゃる。いっさいの光景を見ておられるんだ。恐ろしいことの起るのを、果たして神が見のがしておくだろうか?アリョーシャ、俺は奇蹟を信ずるよ、行ってきてくれ!」
奇蹟というのは、「フョードル」が三千ルーブルを手渡すということですね。
「ドミートリイ」自身もそんなことは絶対にありえないと思っているのですから、「フョードル」の気まぐれに期待して、三千ルーブルくれと言ってみるだけですね。
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