2017年4月9日日曜日

374

「イワン、イワン!早く水をやれ。あれと同じだ、彼女にそっくりだよ。あのときのこれの母親とそっくり同じだ!口で水を吹きかけてやれ、俺もそうしてやったもんだ。これは自分の母親のために、自分の母親のために・・・」と彼は「イワン」につぶやきました。

「しかし、僕の母親も、これの母親と同じだと思いますがね、どうですか?」とふいに「イワン」は憤りにみちた軽蔑を抑えきれずに、食ってかかりました。

老人はきらりと光った相手の眼差しにぎくりとしました。

が、このとき、なるほどほんの一瞬ではありましたが、何か実に奇妙なことが起こりました。

「アリョーシャ」の母はまた「イワン」の母親でもあるという判断が、本当に老人の頭からけしとんでしまったようでした。

「お前の母親だって?」理解できずに、彼はつぶやきました。

「どうしてそんな?だれの母親のことだ?えい、畜生!いつになく、ほんやりしちまって。失敬、失敬、俺はまた、イワン・・・へ、へ、へ!」と彼は口をつぐみました。

半ば無意味な、酔払いの長い薄笑いが、その顔にひろがりました。

ここで「ほんの一瞬ではありましたが、何か実に奇妙なこと」と作者が書いているように、確かに「フョードル」は不思議なことに、いわゆる家族関係について盲目なのだと思います。

「アリョーシャ」は発作を起こすことによって自己表現をしましたが、「イワン」も当然憤りを感じていたのであり、その怒りを「フョードル」にぶつけています。

と、まさにその瞬間、突然、玄関で恐ろしい騒めきと物音がきこえ、気違いじみたどなり声がしたと思うや、ドアが勢いよく開き、「ドミートリイ」が広間にとびこんできました。

老人はぎょっとして「イワン」の方にとびのきました。

「殺される、殺される!止めてくれ、俺を見殺しにしないでくれ!」と「イワン」のフロックの裾にしがみついて、老人はわめきました。

すごいことになりましたね。

隣家の庭にいたはずの「ドミートリイ」が飛び込んできたのです。

そして、そこには「アリョーシャ」が気絶して横になっているのですから。


ここに家族全員が再び結集したのですが、とんでもない修羅場です。


0 件のコメント:

コメントを投稿