2017年5月13日土曜日

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「それじゃ、カテリーナさんはどうなるの!」と「アリョーシャ」は悲しげに叫びました。

「そっちもよくわかった、裏の裏までわかったよ、今までにないくらいよくわかった!それこそまさに世界の四大州の発見さ、いや、五大州だったな!なんて思いきった行為だ!それでこそまさしく、あのカテリーナにほかならないんだよ、ひどい辱しめを受ける危険をおかしてまで、父を救おうというおおらかな考えから、非常識でがさつな将校のもとへ忍んでくることを辞さなかった、あのときの女学生そのままじゃないか!しかし、そこが彼女のプライドなのさ、大博打を打とうというやむにやまれぬ気持なんだ、運命への挑戦だよ、はてしない挑戦だ!叔母さんがあの人を引きとめたとか言ってたな?あの叔母さんてのが、だいたい、わがままな女なんだ。モスクワにいる例の将軍夫人の実の妹で、将軍夫人よりもっと威張りちらしていたんだけれど、夫が公金横領を見つかって、領地も何もかも失くしてしまったもんだから、傲慢なその夫人も急にしおらしくなって、それ以来うだつが上がらないってわけさ。それじゃ、あの叔母さんがカテリーナをとめたのに、彼女が言うことをきかなかったんだな。『あたしは何だって征服してみせる。すべて、あたしの思うままなんだ。その気になれば、グルーシェニカだって手玉にとってみせるわ』ってわけだ。そして彼女は自分を信じ、自分に対して見栄を張ったんだよ、とすればだれがいったいわるいんだい?お前は、彼女が抜目ない計算のもとに、わざと自分が先にグルーシェニカの手にキスしたと、そう思うかい?そうじゃない、彼女は本当に、本心からグルーシェニカに惚れこんだんだよ、つまり、グルーシェニカにじゃなく、自分の夢に、自分の夢物語にさ、なぜってそれはあたしの(4文字の上に傍点)夢、あたしの(4文字の上に傍点)夢物語だからさ!なあ、アリョーシャ、それにしても、どうやってあの女たちから逃れられたんだい?僧服の裾をからげて逃げだしたってわけか?は、は、は!」

「カテリーナ」が「グルーシェニカ」に会うのを引き止めた叔母さんについて、「ドミートリイ」はわがままで、威張りちらしていたと言っていますが、「フョードル」の家の隣家の庭で「アリョーシャ」に説明したときには、「叔母さんというのは、口数の少ない素朴な人だったし・・・」と言っていますね。

ここでは、「ドミートリイ」が「カテリーナ」のことを語っています。

それは、彼女が自分の見込んだ人のためにならば、つまりそれが自分の「夢」そして「夢物語」ということでしょうが、そのためならば、自分をかえりみず、また勝敗のことも考えないで運命に挑戦するタイプだと言っているということでいいのでしょうか。

そして、大博打を打って挑戦せざるをえないのが彼女のプライドだと言っていますが、これは自分が正しいと思うことならば、行動で示さなければならないという自分の中の決まりごとなのだと思いますが、それは普通はプライドとは言いませんね。

そして「カテリーナ」が先に「グルーシェニカ」の手にキスしたのは、つまり「グルーシェニカ」に惚れ込んだそぶりを見せたことは何か策略的なことではなく、「カテリーナ」自らの全能感からくるものでしょうが、相手は誰であっても関係なく、自分の中で作り上げたストーリーの見事さにキスしたのだということでしょう。

だから、「カテリーナ」にとっては、相手は「グルーシェニカ」でも「ドミートリイ」でも誰でもいいわけです、極端に言えば相手の人間性を見ていないのです、そして、自分の正義感や義侠心から相手に対して自分を捨ててまで行動を起こす自分が好きなのです。


これは、悪く言えば偽善者ということかもしれません、つまり「ドミートリイ」は「カテリーナ」の中の偽善的なところに気づき嫌になったということだと思いますが、一方の「グルーシェニカ」の方は反対に偽悪的なところがあって、その辺は「ドミートリイ」と共通する部分があるのではないでしょうか。






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