三 中学生たちとの結びつき
『グルーシェニカのことをきかれなくて、助かった』父のところを出て、「ホフラコワ夫人」の家に向かいながら、今度は「アリョーシャ」が思いました。『でないと、グルーシェニカとの昨日の対面を話さなけりゃならなかっただろうからな』と「アリョーシャ」は、一夜のうちに仇同士が新しい力をかき集め、夜明けの訪れとともに二人の心がふたたび硬化したのを、胸痛む思いで感じました。『お父さんは苛立って、敵意に燃えている。何事か思いついて、それにこだわっているんだ。それじゃ、ドミートリイ兄さんのほうはどうだろう?兄さんだって一夜で気力をとり戻して、きっと苛立ち、敵意に燃えているにちがいない。そして、もちろん何事かやはり考えだしたことだろう・・・ああ、どんなことがあっても、必ず今日のうちに兄さんを探しださなけりゃ』
しかし、「アリョーシャ」はいつまでも考えごとをしているわけにいかなくなりました。
途中でふいに、一見さほど重大ではなさそうですが、彼に強いショックを与えた、ある出来事が生じたのです。
広場を過ぎたあと、広小路と溝川一つでへだてられて(この町は縦横に溝川がながれていた)平行に走っているミハイロフ通りへ出るために、横町を曲ったとたん、彼は坂下の橋の手前に、いずれも九つからせいぜい十二くらいまでの年少の子供ばかりでしたが、中学生(訳注 当時の小学校は三年制度。そのあと中学にすすむ)の小さな一団を見いだしました。
この描写で私は位置関係が想像できないのですが、作者が住んだことがあり、この町のモデルになったらしいスターラヤルッサの町には、彼らが出会った場所が現存しているようです。
学校から家へ帰るところで、ランドセルを背負っているのもあれば、革鞄を肩からさげ渡している子もあり、ジャンパー姿のも、外套を着ている子もあって、なかには裕福な父親に甘やかされている幼い子供が特に好んでひけらかす、胴に襞の入った深い長靴を履いている子もいました。
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