グループ全員が何やら気負いたって論じたて、どうやら相談しているところらしいのです。
モスクワにいたころもそうでしたが、「アリョーシャ」は子供たちのわきを無関心で素通りすることがどうしてもできませんでした。
いちばん好きなのは三つかそこらの子供でしたが、十か十一くらいの中学生も大好きでした。
だから、現在どれほど心配ごとがあろうと、彼はふいに子供たちの方に足を向け、話の仲間入りをしたくなったのです。
そばに近よりながら、彼は少年たちの真っ赤な、溌剌とした顔に眺め入り、ふと子供たちがみな手に石を一つずつ、中には二つも握っているのに気がつきました。
また、溝川の向うには、このグループからおよそ三十歩ほどへだてた塀のわきに、少年が一人立っていました。
三十歩というのは23~4mですね。
やはり鞄を肩からさげた中学生で、背丈からするとせいぜい十か、あるいはもっと下かもしれないくらいでしたが、青白い病的な少年で、黒い目をきらきらかがやかせていました。
少年は、明らかに学校友達で今しがたいっしょに学校を出てきたのですが、どうやら敵対関係にあるらしい、六人の中学生のグループを、探るように注意深く観察していました。
「アリョーシャ」はそばに行くと黒いジャンパーを着ている、ブロンドの巻毛をした、血色のいい少年に向って、その姿を眺めながら言いました。
「僕が君たちみたいな鞄をさげていたころには、右手ですぐに出せるように、鞄を左側にさげていたもんだよ。君は鞄を右側にさげているけど、それじゃ出しにくいだろ」
「アリョーシャ」は何らわざとらしい細工をこらさずに、いきなりこういう実際的な感想から話を切りだしました。
ところで、大人が子供の、それも特に子供たちのグループ全体の信用をいきなり博するには、これ以外の話の切りだし方はないのです。
必ず、まじめに、事務的に、しかもまったく対等の立場で話をはじめなければなりません。
大人が子供たちのグループに入って行くには①実際的な話題で②まじめに③事務的に④対等な立場で話を切りださなければならないと書かれていますが、こういう細かいところまで考えぬいて書く作者の集中力にはおどろかされます。
「アリョーシャ」は本能でそれを理解していました。
「だって、そいつは左ぎっちょだもの」すぐに十一くらいの、威勢のいい、丈夫そうな別の少年が答えました。
あとの五人はみな、「アリョーシャ」に目を釘付けにしていました。
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