まだ「コーリャ」の長い会話の続きです。
・・・・そこへ突然、あの子のお父さんの事件が起ったんです、おぼえてらっしゃるでしょう、例のへちまの一件を? おわかりでしょうけど、そんなわけであの子は前もってもう、恐ろしい癇癪を爆発させる下地はできていたんですよ。子供たちは、僕が相手にしなくなったのを見ると、あの子をいじめにかかって、《へちま、へちま》とからかいはじめました。そんなとき、僕がひどく気の毒に思っている例の喧嘩が起ったんです。だってあのとき、あの子は一度こっぴどく殴られましたものね。ある日、教室から出ると、校庭であの子はみんなにとびかかっていきました。ちょうど僕は十歩ほど離れたところにいて、見ていたんです。誓って言いますけど、あのとき僕は笑った記憶はありませんよ。むしろ反対に、あの子がとても、とても気の毒になって、あと一瞬したら、味方しにとびだしたにちがいないんです。ところが、あの子は突然、僕と目が合うと、どう思ったのか知らないけど、ペンナイフをつかむなり、とびかかってきて、僕の腿を、右足のここのところを突き刺したんですよ。カラマーゾフさん。僕はただ『それが僕の友情に対するお礼なら、もっとやったらどうだい、どうぞご勝手に』と目で言わんばかりに、軽蔑の目で見つめてやりました。でも、あの子はもう一度刺そうとはせず、こらえきれずに、自分のほうがこわくなって、ナイフを棄てると、大声で泣きだして、一目散に逃げて行きましたっけ。僕はもちろん告げ口なんかしませんでしたし、みんなにも先生の耳に入らぬよう黙っていろと言いつけて、母にさえ、すっかり癒ってからはじめて話したほどです。それに傷といってもたいしたことはなく、ひっかいた程度でしたし。あとできいたんですけど、その日あの子は石を投げたり、あなたの指を噛んだりしたんですってね。でも、あの子がどんな気持だったか、わかってくださるでしょう! 仕方がありません、僕がばかなことをしたんです。あの子が病気になったとき、僕は赦してやりに、つまり仲直りしに行きませんでした。今になって後悔してるんです。でも僕には特別な目的があったんですよ。さ、これが今までのいきさつです・・・・ただ、僕はばかなことをしたようですね・・・・」
これでやっと長い「コーリャ」の話が終わりました、彼は会話の中でだんだん素直になっていき、自分はばかだったと反省していますね、私は投石の場に「コーリャ」もいたと勘違いしていましたが、(442)にありますが、「・・・・さっき教室でクラソートキンをペンナイフで突いて、血を出したんだよ。クラソートキンは先生に言いつけようとしなかったけど、あんなやつ、のしちゃわなきゃ・・・」というセリフのとおり、「コーリャ」はその場にはいなかったのですね、だから「あとできいたんですけど、その日あの子は石を投げたり、あなたの指を噛んだりしたんですってね」と言っているのですね。
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