2018年8月23日木曜日

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「でもね、犬を連れた君の姿を見て、僕はてっきり君がまさしくジューチカを連れてきたんだと思いましたよ」

このセリフもここではあまり意味がないと思いますが、あとになってそうじゃないことがわかります。

「まあ待ってください、カラマーゾフさん、ひょっとしたら僕たちで探しだせるかもしれませんよ、でもこの犬は、これはペレズヴォンです。僕は今この犬を部屋に入れてやります。もしかしたら、マスチフ以上にイリューシャを喜ばせるかもしれませんからね。待っててください、カラマーゾフさん、今すぐいろいろなことがわかりますから。あ、たいへん、こんなにあなたを引きとめてしまって!」

この「コーリャ」の試みは「イリョーシャ」を驚かせはするでしょうが、本心で喜ぶかどうかは疑問です。

突然「コーリャ」がひたむきに叫びました。

「あなたはこんな寒さにフロックだけなのに、引きとめてしまって。ね、どうですか、僕はなんてエゴイストなんだろう! ああ、僕たちはみんなエゴイストばかりですね、カラマーゾフさん!」

なぜ、「僕はエゴイスト」が「僕たち」になったのでしょう、この一瞬の変わり身の中に「コーリャ」が何か考えてそう言ったのでしょうが。

「心配ないですよ。そりゃたしかに寒いけど、僕は風邪をひきやすいほうじゃないから。それにしても、もう行きましょう。ついでに、何てお名前ですか? コーリャってことは知ってるけど、そのあとは?」

「ニコライです、ニコライ・イワノフ・クラソートキン、お役所風に言えばクラソートキンの子息です」

ここで「アリョーシャ」がわざわざ名前を聞いているのはなぜなんでしょうか、セリフでなくても説明できると思うんですが、この質問は唐突です。

なぜか「コーリャ」は笑いだしましたが、ふいに付け加えました。

「僕はもちろん、ニコライなんて名前は大きらいですけど」

「どうして?」

「月並みだし、お役所風だから・・・・」

「君は数えで十三?」

「アリョーシャ」がたずねました。

「いえ、つまり、数え年で十四、あと二週間すれば満で十四歳になります。もうすぐですよ。あなたには前もって僕の弱点を打ち明けておきますけど、カラマーゾフさん、これはあなたにいっぺんで僕の性質を知っていただけるように、お近づきのしるしに打ち明けるんですが、僕は年齢のことをきかれるのが大きらいなんです、大きらい以上なんですよ・・・・それから最後に・・・・僕に関して、たとえば先週、僕が予備クラスの子供たちと、追い剥ぎごっこをしたなんて中傷があります。遊んだことは事実ですけど、僕が自分のために、自分が楽しむためにそんな遊びをしたなんていうのは、これはまったく中傷です。この話があなたの耳に入っていると考えるだけの根拠が僕にはあるんですが、僕は自分のためじゃなく、子供たちのためにやったんですよ、だって子供たちは僕がいないと何一つ考えだせないもんですからね。この町じゃいつも下らぬ噂が広まるんだから。ここは流言蜚語の町ですよ、本当の話」


なんとも用心深い性格ですね。


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