2018年9月18日火曜日

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「すてきだ! 僕はあなたを誤解していなかった。あなたは人を慰める才能を持ってますね。ああ、僕はどんなにあなたに憧れていたことでしょう、カラマーゾフさん、あなたと会う機会をずっと前から求めていたんです! ほんとにあなたも僕のことを考えていてくださったんですか? さっきそうおっしゃったでしょう、あなたも僕のことを考えていたって?」

「ええ、君の噂をきいて、僕も君のことを考えていました・・・・かりに今そんなことをきいたのが、ある程度まで自負心のさせたわざだとしても、それはかまいませんよ」

「あのね、カラマーゾフさん、僕らのこの話合いは、なんだか恋の告白みたいですね」

なんとなく弱々しくなった、恥ずかしそうな声で、「コーリャ」がつぶやきました。

「これはこっけいじゃありませんか、こっけいじゃないでしょうね?」

「全然こっけいじゃありませんよ。また、たとえこっけいだとしても、いいことなんだから、かまわないじゃありませんか」

「アリョーシャ」が明るく微笑しました。

「でもねえ、カラマーゾフさん、そういうあなただって僕と今こうしているのが、少しは恥ずかしんでしょう・・・・目を見ればわかりますよ」

なにかいたずらっぽく、しかしほとんど幸福といえる表情をうかべて、「コーリャ」が薄笑いをうかべました。

「どうして恥ずかしいんです?」

「じゃ、なぜ赤くなったんですか?」

「それは、赤くなるように君が仕向けたからですよ!」

うまい言い訳ですね。

「アリョーシャ」は笑いだし、本当に真っ赤になりました。

「そう、なぜかわからないけど、いくらか恥ずかしいな、どうしてだかわからないけど・・・・」

ほとんど照れた顔にさえなって、彼はつぶやきました。

ほんとうに「コーリャ」が言ったように「恋の告白」と同じではないでしょうか、こういう心情はたしかにあるということはわかりますが、何と言ったらいいのでしょうか、この作者はこのような微妙なところを探すのが好きなようですね。

「ああ、僕はあなたが大好きだし、今この瞬間のあなたを高く評価します、つまり、あなたも僕といっしょにいるのをなぜか恥ずかしがっていることに対して! だって、あなたも僕と同じだからですよ!」

「コーリャ」はまったく感激して叫びました。

頬が燃え、目がかがやいていました。

「あのね、コーリャ、それはそうと君はこの人生でとても不幸な人になるでしょうよう」

このセリフはどうしても、この後の書かれなかった物語の展開を思ってしまいます。

突然どういうわけか、「アリョーシャ」が言いました。

「知ってます、知ってますとも。ほんとにあなたは何もかも前もってわかるんですね!」

すぐに「コーリャ」が相槌を打ちました。

「しかし、全体としての人生は、やはり祝福なさいよ」

このセリフもすばらしいと思います。

「ええ、たしかに! 万歳! あなたは預言者だ! ああ、僕たちは仲よくなれますね。カラマーゾフさん。実はね、何よりも僕を感激させたのは、あなたが僕をまったく対等に扱ってくれることなんです。でも、僕たちは対等じゃない、違いますとも、対等どころか、あなたのほうがずっと上です! だけど、僕たちは仲よくなれますね。実はこのひと月というもの、僕はずっと自分にこう言いつづけていたんです。『僕たちは一遍で永久の親友になるか、さもなければ最初から、墓場までの仇敵として袂を分つか、だ!』って」

このセリフもまた相手と自分との権力関係を理解した上での対等ということを表しています。

「そう言うからには、もちろん僕を好きだったんですね!」

「アリョーシャ」が朗らかに笑いました。


「好きでした、すごく好きでした。好きだったから、あなたのことをいろいろ空想していたんです。それにしても、どうしてあなたは何でも前もってわかるんですか? おや、医者が出てきた。ああ、何て言うだろう、見てごらんなさな、あの顔を!」


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