2017年10月17日火曜日

565

「チェルマーシニャからじゃ、呼んでくれないのか・・・・何かあった場合にも?」

何のためともわからず、ふいに恐ろしく声を張りあげて、「イワン」は突然わめきました。

「チェルマーシニャでもやはり・・・・お騒がせすることでしょう」まるで困惑しきったかのように、だが、じっと食い入るように「イワン」の目をひたと見つめつづけたまま、ささやきに近い声で「スメルジャコフ」がつぶやきました。

「そんなにチェルマーシニャにこだわるのは、モスクワは遠いけれどチェルマーシニャなら近いから、馬車代を惜しんでいるわけか、それとも俺がたいへんなまわり道をすることになるのが気の毒ってわけか?」

チェルマーシニャとモスクワの距離はどのくらいでしょうか。

(341)で書きましたが、ネットの情報では「チェルマーシニャ村はスターラヤルッサとベリーキーノブゴロドの中間に位置するものと思われる架空の村」とのことです。

ベリーキーノブゴロドというのは、ロシア連邦の都市ノブゴロドの正称だそうです。

その前に、『カラマーゾフの兄弟』の舞台スターラヤ・ルッサは、「古都ノヴゴロドから約100km離れた古い田舎町。温泉の湧き出る保養所として古くから有名で、ドストエフスキー夫妻もこの地の自然環境をとても気に入り、1876年に、現在博物館となっている建物を購入しました。“カラマーゾフの兄弟”の舞台はこの街だとされており、作品のゆかりの場所が至るところに残されています。」とのことです。

地図で見るとスターラヤ・ルッサとモスクワは700km以上離れています。

そして、スターラヤ・ルッサとノヴゴロドはイリメニ湖を挟んだ対岸どおしで直線距離で約100km離れています。

スターラヤ・ルッサはモスクワとノヴゴロドの間に位置しますので、ここで言うチェルマーシニャはイリメニ湖に左右どちらかに面しているのかもしれませんが、いずれにせよモスクワからは反対方向になります。

「まさにそのとおりでございますよ」

胸くそのわるくなるような微笑をうかべ、いつでもうしろにとびすされるよう、またもや不安げに身構えると、「スメルジャコフ」はもはやかすれた声で言いました。

しかし、「スメルジャコフ」のおどろいたことに、「イワン」はだしぬけに声をあげて笑いだし、笑いつづけながら、早足に木戸をくぐりました。

その顔を見た者があれば、彼が笑いだしたのは、決して愉快だったからではないと、確実に結論を出したにちがいありません。

それに彼自身も、このときこの瞬間、自分がどうなっているか、絶対に説明できなかったでしょう。

彼の動作も歩き方も、まるで痙攣を起しているかのようでした。

「スメルジャコフ」がこれから起こる事件を確信しているのに対して、「イワン」はどう考えているのでしょうか、そして「イワン」の特異な言動の描写の意図は何でしょうか、彼もこれから起こりうる事件について明確な見通しがあるということでしょうか、それとも自分では何もわからず無意識的なものなのでしょうか。

ここで、事件を起こしうる可能性のある人物、つまり事件というのは「フョードル」殺害のことですが、まず第一に、これは絶対的に誰がどう考えても「ドミートリイ」でしかありえません、彼には「グルーシェニカ」のこととお金のことのふたつの大きな理由があります。

そして、これはちょっと考えられないことですが、「フョードル」が隠したお金の場所を知っている「スメルジャコフ」。

また、チェルマーシニャに行くとすれば可能性が全くなくなりますが、「フョードル」を心の奥底で憎んでいる「イワン」でしょうか。

この時点で殺意のある人物を広範囲に想定すればこの三人だと思います。

この三人はみんな「フョードル」の子であることに気づきました。

「ドミートリイ」は「アデライーダ」の長男、「イワン」は「ソフィヤ・イワーノヴナ」の長男、「スメルジャコフ」は「リザヴェータ・スメルジャーシチャヤ」の長男です。


しかし、「スメルジャコフ」と「イワン」は限りなく犯罪から遠のきますが。



0 件のコメント:

コメントを投稿