「というわけで、サムソーノフさん、いかがでしょう、あの悪党に対するわたしの権利いっさいを肩代りしていただけませんでしょうか、わたしには三千ルーブル下さればそれだけで結構です・・・・あなたは絶対に負ける心配はありません、それは名誉にかけて、わたしが名誉にかけて誓います、それどころか反対に、三千ルーブルの代償として六千か七千ルーブル儲けることができるんですからね・・・・肝心なのは、この件を《今日じゅうにも》片づけるってころなんですよ。公証人、と言うんですか、そこへでもどこへでもわたしが行きますから・・・・一口に言って、わたしはどんなことでもするつもりですし、あなたの要求する書類は全部渡して、何にでもサインします・・・・ですから、すぐにもその書類を作ってしまいたいんです、できるなら、もしできるなら、今日の昼前にでも・・・・で、あなたからその三千ルーブルをいただけるとありがたいのですが・・・・なにしろ、この町にはあなたの右に出る資本家はいませんし・・・・また、そのことによって、あなたはわたしを救うことに・・・・つまり、一口に言って、立派な仕事のために、言うなれば高潔な仕事のために、この哀れな男を救うことになるのですからね・・・・と申しますのも、わたしはあなたがあまりにもよくご存じで、父親のように世話しておられる例のご婦人に対して、この上なく高潔な感情をいだいているからなのです。もし父親のようなお世話でなかったら、もしそうでなかったら、こちらへ伺ったりはしませんよ。何でしたら申しあげますが、ここで三人が鉢合せをしたわけなんでして。とにかく運命とは恐ろしいものですね、サムソーノフさん! リアリズムです、サムソーノフさん、まさにリアリズムですよ! でも、あなたはもうとうの昔に除くべきですから、あとは二人の鉢合せというわけだ。ことによると、わたしの表現はうまくないかもしれませんが、なにしろ文学者じゃないものですからね。つまり、一つの額はわたしので、もう一つがあの悪党のというわけです。ですから選んでください、わたしか、それともあの悪党をか? 今や、三つの運命と二つのくじが、すべてあなたの手中に握られているのです・・・・すみません、話が混乱してしまって、でもわかっていただけるでしょうね・・・・あなたの立派な目を見れば、ご理解いただけたことがわかりますよ・・・・もしご理解いただけなければ、今日にも水にとびこむまでです、そうですとも!」
このような場合誰もお金なんか貸したくても貸しませんね、相手が尋常でないことはすぐわかります。
「ミーチャ」は『そうですとも』という言葉でこのばかげた話を打ち切ると、席を立って、自分の愚かしい提案に対する答えを待ち受けました。
最後の一句とともに彼は突然、すべてが失敗に終ったことを、そして何よりも、自分が恐ろしく愚にもつかぬ話を並べたてたことを、絶望的に感じました。
「ドミートリイ」は話しながら自分で失敗だとわかっているのですね、彼は客観的に自分で自分を分析しており、語り手はさらに客観的な立場からそのことを描写しています。
『変だな、ここへ来るまでは、すべてがすばらしいことに思えていたのに、今やこんなばかげたことになるなんて!』
絶望した頭を、ふとこんな思いが走りすぎました。
彼が話している間ずっと、老人は身じろぎもせずに坐り、眼差しに氷のような表情をたたえて見守っていました。
それでも、一分ほどは相手に期待をもたせてから、「サムソーノフ」はやっと、この上なく決然とした、にべもない口調で言いました。

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