「だれを?」
「チジョフをさ」
「チジョフなんざ、お前もろとも失せやがれだ! あの野郎、たたきのめしてやる、そうだとも! 人をばかにしやがって!」
「チジョフをたたきのめすんだって? あんたなんぞ逆にやられちゃうわよ! ばかだね、ほんとに!」
「チジョフじゃねえ、チジョフじゃないよ、あんたも意地のわるい女だな。あの小僧をたたきのめすっていうんだ! あいつを連れてきてくれ、ここへ連れていてくれよ、俺をばかにしやがって!」
女たちは笑いころげていました。
一方「コーリャ」は得意げな表情で、もう遠くの方を歩いていました。
「スムーロフ」は、遠くでわめいている一団の人々を何度もふりかえりながら、ならんで歩きました。
「コーリャ」といっしょにいて騒動に巻きこまれはせぬかという不安は相変らずあったものの、彼もやはりひどく楽しかったのです。
この十一歳と十三歳の少年たちの行状はまったくくだらないものです、「コーリャ」はただ騒ぎを起こすことだけが目的で、大人たちに関わっています、作者は、この年頃の馬鹿さ加減を追体験しているのか、それとも身近で観察したのか知りませんが、未熟な時代のことをそのままの形で描写することについて、彼ら少年たちの性格を際立たせる以外に何らかの意味はあるのでしょうか。
「君のきいていたサバネーエフって、どこの人?」
返事は予想できたものの、彼は「コーリャ」にたずねました。
「どこの人だか、知るもんか。こうなったらあの連中、晩まで騒ぎつづけるだろうよ。僕はね、社会のあらゆる階層のばか者どもを揺さぶってやるのが好きなんだ。ほら、また一人、間抜けが突っ立ってる。ほら、あの百姓さ。あのね、『愚かなフランス人ほど愚かなものはない』なんて言うけど、ロシア人の顔つきだってお里が知れてらあね。あの男の顔に、俺はばかだって書いてないかい、あの百姓の顔にさ、え?」
いくら子供だとはいえ、このような性格の子供はあまりいないでしょう、根っから周りを巻き込む騒ぎを起こすことが好きなのですね、しかしそういう人物に同調する子供は大勢いるかもしれません。
「放っときなよ、コーリャ、素通りしようよ」
「絶対にやめないぜ、今や調子が出ちまったんだから。よう、こんにちは、お百姓さん!」
どうやらすでに一杯ひっかけてきたらしい、純朴そうな丸い顔に白髪まじりの顎ひげを生やした、頑丈な百姓は、ゆっくりわきを通りすぎようとしかけて、ふと頭を上げ、少年を見つめました。
「ああ、こんにちは、ふざけてるんでなけりゃな」
百姓は落ちついて答えました。
「もしふざけているんだとしたら?」
「コーリャ」は笑いだしました。
「ふざけてるんだったら、ふざけるがいいさ、勝手におし。なに、かまわんとも。ふざけるくらい、いつだってかまわんよ」
「ごめんよ、ふざけたんだ」
「じゃ、神さまが赦してくださるさ」

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