「僕の天性なぞ心配しないでください」
多少の自己満足をおぼえながら、「コーリャ」はさえぎりました。
「僕が疑り深いってことは、たしかにそのとおりです。僕はばかみたいに疑り深い、失礼なほど疑り深いんです。あなたは今笑いましたね、僕の気のせいもしれないけど、あなたはまるで・・・・」
「アリョーシャ」は「コーリャ」が「疑り深い」ということは、言っていないと思いますが。
「ああ、僕が笑ったのは、全然別のことですよ。実はね、僕が笑ったのはこんなことなんです。この間、前にロシアに住んでいて今は外国にいるさるドイツ人の、現代のわが国の若い学生についての批評を読みましてね。その人はこう書いているんです。『ロシアの中学生に天体図を見せてやるといい。その中学生はこれまで天体図に関して何の知識も持っていなかったのに、明日になるとその天体図を修正して返すだろう』何の知識もともなわぬ、一人よがりのうぬぼれ-これがロシアの中学生について、そのドイツ人の言いたかったことなんですよ」
「ああ、だって、まったくそのとおりですもの!」
「アリョーシャ」の言葉は「コーリャ」に対する皮肉ですが。
突然「コーリャ」が笑いだしました。
「どんぴしゃり、まさにそのとおりだ! ドイツ人、万歳ですよ! しかし、そのドイツ野郎はいい面も見てくれなかったんですね、どう思います? うぬぼれ–かまわないじゃありませんか、それは若さゆえです、直す必要が生じさえすれば、そんなものは直りますよ。でも、その代りごく幼いころから、自立の精神だってありますからね。代りに、思想と信念の大胆さがあるんです、権威に対する連中のソーセージ的な奴隷根性じゃなしにね・・・・しかし、それにしても、そのドイツ人はうまいことを言いましたね! ドイツ人、万歳だな! もっとも、やっぱりドイツ人は絞め殺さなけりゃいけませんね。連中が科学に強くたってかまわないけど、やはり絞め殺す必要がありますね・・・・」
「なぜ絞め殺すんです?」
「アリョーシャ」は微笑しました。
「いえ、僕はよた(二字の上に傍点)をとばしたのかもしれません、それは認めます。僕はときおりひどく子供になって、何か嬉しいことがあると、抑えがきがずに、下らないことをしゃべりかねないんです。それはそうと、僕たちはここで下らぬおしゃべりをしてますけど、あの医者はなんだかずいぶん手間どってますね。もっとも、ことによると《かあちゃん》や、足のわるいニーノチカも診察してるのかもしれないな。いや、あのニーノチカは気に入りましたよ。さっき僕が出てくるとき、あの人は突然『なぜもっと早く来てくださいませんでしたの?』って、ささやいたんですよ。おまけに、難ずるようなあの声! あの人はおそろしく善良な、気の毒な人のような気がしますね」
残念なことに「コーリャ」の方から話題を変えましたね、「ニーノチカ」は本心で非難していると思いますが、「コーリャ」はその辺があまりわかっていないようです。

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