「まさにそのためです」
こういうことを言うということは「コーリャ」は全く「アリョーシャ」の意なぞまったくくまず、反省なんか全然していないのですね、むしろいいことをしてあげていると思っているようで意気揚々ですね。
「コーリャ」はいたって無邪気に叫びました。
「完全に仕上がったところを見せたかったんですよ!」
「ペレズヴォン! ペレズヴォン!」
突然「イリューシャ」が細い指を鳴らして、犬を招きました。
「どうしたの? こいつを君のベッドへ上がらせりゃいいよ。こい、ペレズヴォン!」
「コーリャ」が掌でベッドをたたくと、ペレズヴォンは矢のように「イリューシャ」のところにとびこみました。
「イリューシャ」はやにわに両手で犬の首をかかえこみ、「ペレズヴォン」はそのお返しにすぐさま頰を舐めまわしました。
「イリューシャ」は犬を抱きよせて、ベッドに身を伸ばし、顔を房々した犬の毛に埋めてみなから隠しました。
「あれ、まあ!」
二等大尉が叫びました。
そういえば、マスチフの子犬はかわいそうですね。
「コーリャ」はまた「イリューシャ」のベッドに腰をおろしました。
「イリューシャ、もう一つおもしろい物を君に見せてあげられるんだ。僕は君に大砲を持ってきてあげたよ。おぼえてるだろ、あのころ僕がこの大砲の話をしたら、君は『わあ、ぜひ見たいな!』って言ったじゃないか。だから今持ってきたんだ」
そして「コーリャ」は急いで鞄からブロンズの大砲を取りだしました。
急いだのは、彼自身も非常に幸福な気持だったからです。
これがほかのときなら、「ペレズヴォン」のひき起した効果のおさまるのを待ったにちがいありませんでしたが、今はあらゆる自制を軽蔑して、急ぎました。
『これだけでも君たちは幸福だろうが、もう一つおまけに幸福をあげよう!』と言わんばかりでした。
彼自身もすっかり陶酔していました。
「僕はもうずっと前から、官吏のモロゾフのところでこれに目星をつけていたんだよ、君のためにさ、爺さん、君のためにだよ。あそこにあっても宝の持ち腐れだからね。あの人は兄さんからせしめたそうだけど、僕はパパの書棚にあった『マホメットの親戚、または霊験あらたかな愚行』という本と取り換えたのさ。百年も前の、いかがわしい本でね、まだ検閲のなかったころ、モスクワで出版されたものなんだ。モロゾフはそういうものに目がないんでね。お礼まで言われたくらいさ・・・・」
「コーリャ」は大砲を片手にのせてみなの前にかざしていたので、みんなが見て楽しむことができました。
「イリューシャ」は半身を起し、右手でなおもペレズヴォンを抱きかかえたまま、惚れぼれと玩具を眺めていました。
「コーリャ」が火薬もあるから、《ご婦人方さえご心配でなければ》、今ここで撃つこともできると言いだすにおよんで、効果は頂点に達しました。
《かあちゃん》がすかさずもっと近くで玩具を見せてほしいと頼み、頼みはただちにきき入れられました。
彼女は車輪のついたブロンズの大砲がひどく気に入り、膝の上でころがしはじめました。

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