撃つ許可を求められると、彼女は一も二もなく同意しましたが、そのくせ何をたずねられたのか、わかっていないのでした。
「コーリャ」が火薬とばら弾を示しました。
旧軍人である二等大尉がみずから装填の指揮にあたり、ほんのちょっぴり火薬をつめて、ばら弾のほうはまたの機会まで延ばしてくれるよう頼みました。
さすがに元軍人ですね、いろいろと気を配っているのでしょう。
何もない場所へ砲口を向けて、床の上に大砲を据え、点火孔に火薬を三粒入れて、マッチで火をつけました。
この上なくみごとな砲撃が行われました。
かあちゃんはびくりとしかけましたが、すぐに嬉しさのあまり笑いだしました。
少年たちは無口な厳粛な様子で見守っていましたが、いちばん幸せそうなのは、「イリューシャ」を見つめている二等大尉でした。
「コーリャ」が大砲を拾いあげ、ばら弾や火薬ともども、さっそく「イリューシャ」に進呈しました。
「これは君のためにもらったんだよ、君のために! ずっと前から用意しといたんだ」
完全な幸福感にひたって、彼はもう一度くりかえしました。
「あら、わたしにちょうだい! だめよ、その大砲はわたしにくれるほうがいいのよ!」
女性はそんなものは興味がない人が多いと思いますが、彼女はなぜそんなものがほしいのでしょうか。
突然、まるで幼い子供のように、かあちゃんがせがみはじめました。
もらえないのではないかという心配に、その顔が悲痛な不安の色をうかべました。
「コーリャ」はうろたえました。
二等大尉は落ちつかぬ様子でそわそわしはじめました。
「かあちゃん、かあちゃん!」
彼は妻のそばに駆けよりました。
「あの大砲はお前のだよ、お前のだとも。だけど、イリューシャに持たせておこうじゃないか、あの子がもらったんだから。でも、お前のものも同然さ、イリューシャはいつでも貸してくれるからね。あれは二人のお仲間にするといいよ、お仲間に・・・・」
「いやよ、お仲間なんていや。イリューシャのじゃなく、すっかりわたしのものでなけりゃいやだ」
かあちゃんは、もはやすっかり泣きだすばかりになって、ごねつづけました。
「ママ、あげるよ、ほら、あげるってば!」
だしぬけに「イリューシャ」が叫びました。
「ねえ、クラソートキン、ママにこれあげてもいい?」
せっかくのプレゼントを他人にやったりして、気をわるくせぬかと案ずるように、突然彼は祈るような顔つきで「コーリャ」に話しかけました。
「いいとも、もちろんさ!」
「コーリャ」はすぐに同意し、「イリューシャ」の手から大砲をとると、この上なく丁寧なおじぎをしながら、みずからかあちゃんに手渡しました。
彼女は感動して泣きだしたほどでした。
「イリューシャ、いい子だね、ほんとにこの子は母さんを愛してくれるんだね!」
感激して叫ぶと、彼女はすぐにまた膝の上で大砲をころがしにかかりました。
「かあちゃん、お前の手にキスさせておくれ」
夫が駆けより、すぐさまその意図を実行しました。

0 件のコメント:
コメントを投稿