2018年9月5日水曜日

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「それから、いちばんやさしい若い人は、この親切な坊ちゃんだわ!」

恩に着た夫人は、「コーリャ」を指さして言いました。

「火薬はこれからいくらでも持ってきてあげるよ、イリューシャ。今じゃ自分たちで火薬を作ってるんだよ。ボロヴィコフが成分をきいてきたんでね。硝石二十四、硫黄が十、白樺の炭が六の割合で、それをみんないっしょに挽いて、水を入れて、どろどろに混ぜ合わせてから、太鼓の皮で濾すと、火薬ができるんだぜ」

本当かどうかわかりませんが、「コーリャ」の火薬に対する興味は書かれなかった「皇帝暗殺」にかかわる伏線として読めば、そう読めますね。

「もうスムーロフが君の火薬のことを話してくれたけど、ただ、パパが言うには、それは本物の火薬じゃないってさ」

「イリューシャ」が答えました。

「どうして本物じゃないんだい?」

「コーリャ」は赤くなりました。

「ちゃんと燃えるよ。もっとも。僕はわからないけど・・・・」

「いいえ、わたしはべつに、その」

ふいに二等大尉がすまなさそうな顔で駆けよってきました。

「たしかに、本当の火薬はそういう成分じゃないなんて申しましたが、そんなことはどうでもよござんすよ、それだって作れますとも」

「僕は知らないんです、あなたのほうがよくご存じですよね。僕たち、ポマードの瀬戸物の壜に入れて火をつけたら、すごくよく燃えましたよ。すっかり燃えつきて、ほんのちょっと煤が残っただけでした。でも、これはどろどろした液でしかないから、それを皮で濾せば・・・・もっとも、あなたのほうがよくご存じですよね。僕は知らないんです・・・・ところでブールキンは、この火薬のことでお父さんにひどく叱られたんだよ、きいたかい?」

二等大尉は軍人ではありますが、軍人だからと言って火薬の作り方を知っている訳ではないですね。

ふいに彼は「イリューシャ」に顔を向けました。

「きいた」

「イリューシャ」が答えました。

彼はつきない興味と楽しみをおぼえながら、「コーリャ」の話をきいていました。

「僕たちでまる一壜も火薬を作って、それをあいつがベッドの下に隠しといたんだ。そしたらお父さんに見つかってさ。爆発するかもしれんじゃないかって言って、その場でひっぱたいたんだって。僕のことを学校へ言いつけようとしたらしいよ。このごろじゃ、僕といっしょだと出してもらいないんだよ。このごろはだれも僕とは遊ばせてもらえないんだ。スムーロフだって、出してもらえないんだから。みんなの間に悪名を広めちゃったからな。僕は《手に負えない》んだってさ」

「コーリャ」はばかにしたように、せせら笑いました。

「それもみんな、鉄道の一件からだよ」

「ああ、あの思いもよらぬ出来事の話なら、わたしらもききましたですよ!」

二等大尉が叫びました。

「ずっと寝てらしたときはどんなでした? 汽車の下に伏せている間、ほんとに全然こわくなかったんですか? さぞ恐ろしかったでしょうに?」


二等大尉はひどく「コーリャ」の機嫌をとっていました。


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