2016年4月10日日曜日

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彼は二度結婚しており、最初の妻は器量がよく利発で裕福な「アデライーダ・イワーノヴナ・ミウーソフ」です。

彼女とは「駆落ち」して一緒になりましたが、その人格的に不釣り合いな結婚の過程が簡潔に述べられています。

これもロシアの特殊性ということが背景にありそうですが、彼女はこの時代背景のもと、女性の自立や社会の制約に対する反発心、さらに、「駆落ち」によって、ことが成就するという点に刺激的な魅力を感じ、《能なし》と呼ばれていた「下らなぬ男」である「フョードル」と結婚したのではないかと。

一方「フョードル」の方は、女ならだれでもよかったし、美人であるし、すぐにとびついた訳で、しかも、誤解かもしれないが、彼女の方からその気をみせてきた訳だし、こんなにうまくいったことは、はじめてで最後だったらしい。

そして作者は、彼女の選択は「疑う余地なく、他人の思想の反映」であり、「自由を奪われた思考の苛立ち」だと言っています。


彼女は家においても社会においても、あまりにも精神的に束縛されていたので未来の「自由」という幻想に賭けてみたのでしょうか。



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