2016年4月9日土曜日

ここで「フョードル」という人物は、俗物で女にだらしがなくて常識はずれではあるが、自分の財産上の処理については大いにやり手で、それしか能がないという、奇妙ではありますが、そのくせかなりよくあるタイプの人間である、と書かれています。

どこかにそういうタイプの人はいそうに思えてくるから不思議です。

「フョードル」は地主といっても零細な地主であり、ほとんど無一文からはじめて、卑怯なことやあくどいことをして、死んだときには現金で十万ルーブルのお金をためこんでいたそうです。

お金のことがはじめてここで出てくるのですが、当時の十万ルーブルというのは、いったいどのくらいのことでしょう。

これからもお金のことがよく出てきますので、私はずっとその換算率を知りたいと思っていましたが、やっと疑問が解決しました。

それは、光文社古典新訳文庫の「罪と罰1」亀山郁夫訳の「読書ガイド」に書かれていました

「当時のロシアでは、ルーブルとコペイカの単位が用いられていた」「一ルーブルが百コペイカに相当する」「現在の日本の貨幣価値に照らして、一ルーブルを約千円と想定しておおよそまちがいない」と。

ということは、十万ルーブルは約1億円のことです。

実に明快でわかりやすいですね。

これは亀山郁夫さんに感謝です。

また、亀山さんは同じく光文社古典新訳文庫の「カラマーゾフの兄弟2」の「読書ガイド」にも1870年前後の貨幣価値について書かれておりまして、そこでは、「おおおよその目安としては、一ルーブル五百〜千円と考えるのがかなり妥当な線ではないか」となっていますが、千円の方が覚えやすいですね。


(元に戻って)彼は「意地の悪い道化以外の何物でもなく」、周囲の人々にも「常識はずれ」な「半気違い」の一人と思われていました。

ここで使われている差別用語「半気違い」というのは、その大部分がかなり利口で抜目ないものである一面もあると作者は言いますが、これも考えてみると、なるほどと思えてくるから不思議です。

さらに作者は、ここで言う「常識はずれ」というのは、「何か一種独特な、民族的な常識はずれ」と言っていますが、これは当時のロシアの特殊な後進性にたいする批判のようですが、それよりも愛憎という言葉で表現される、と言った方が適切かもしれません。


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