妻「アデライーダ」に逃げられた「フョードル」は連日のように自宅に女たちを呼び込んで酒盛りをし、荒れた生活するようになります。というか、そんなことはいつもしていたようなのですが。
そして彼はそんな自分の悲劇を大げさに脚色して面白おかしく周囲に喋りまくります。彼はそんなことが快感であるような変わった人間なのです。
これは「恥をかかされた夫というぶざまな役割」を演じるピエロです。
ある人からは、彼はそのような自分の状況を喜んでいるのであり、笑いをとるために自分の喜劇的な状態に気づかぬふりをしているのだと辛辣な評価をくだされたりしていましたが、作者は「もっとも、ことによると、彼のそんなところは無邪気な点だったのかもしれない」と書いています。これは、かなり微妙な人間の心理をうまく表現していると思います。
そして彼は、逃げた妻「アデライーダ」の居場所を知ることになります。
彼は、なぜそうするか自分でもわからぬまま、妻と師範出の教師が逃げ延びて開放感にひたりながら幸せな生活をしているだろうペテルブルグに出発する決心をします。
作者はこう書いています。「だが、そう決心すると、とたんに、門出にあたって元気づけにとことんまで飲む特別の権利が自分にはあると考えた。」と。
これも、「フョードル」の性格を見事に表していると思いますが、特に「元気づけ」というのは酒飲みの読者には、身に滲みるような言葉ですね。
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