二 遠ざけられた長男
ここでは、「フョードル」と「アデライーダ」の長男「ドミートリイ」の紹介です。
「ドミートリイ」は「アデライーダ」が残して出て行った三歳の息子(愛称「ミーチャ」)のことです。
母親に捨てられた哀れな子供ですが、結局はこの家の古くからの忠僕「グリゴーリイ」が自分の小屋で面倒をみました。
「グリゴーリイ」が面倒をみたのは一年という短い期間ではありましたが、この間に「ドミートリイ」は「グリゴーリイ」にたいへんお世話になったのです。
しかし、この先、たとえ気が動転してその時には判断力などなかったとしても「ドミートリイ」はその恩を仇で返すようなことをしているのです。
ここで、大騒ぎした父親「フョードル」は「ドミートリイ」の面倒をみるどころか、自分に子供がいることさえもすっかり忘れていたと書かれています。
そんな馬鹿な、と思いますが。
この忘れ方は、無邪気というか、憎しみや恥をかかされた夫としての何らかの感情からくるのではなく、ということは、そのようなことが原因する無意識から子供のことが憎くなって育児を放棄したのではないということです。
ですから、このあたりのことはなかなか理屈ではすんなりと理解しづらいことですが。
しかし、すぐ後で作者は、括弧書きで、子供のことを忘れていたのは事実ではありますが内心では「(実際のところ、わが子の存在を知らぬはずはなかったのだから)」と書いており、読者が少し前に読んで理解しがたいと思ったことをすぐに解決してくれています。
このような、絶妙なタイミングで行われる疑問→解決は、作中で数多くみられます。
しかし、すぐ後で作者は、括弧書きで、子供のことを忘れていたのは事実ではありますが内心では「(実際のところ、わが子の存在を知らぬはずはなかったのだから)」と書いており、読者が少し前に読んで理解しがたいと思ったことをすぐに解決してくれています。
このような、絶妙なタイミングで行われる疑問→解決は、作中で数多くみられます。
「フョードル」と言う人は、自分のことだけしか考えなくて、非常識で反社会的で犯罪的と思われるようなことを素面でやってしまう人なのです。
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