2016年4月22日金曜日

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不幸な幼年期を送った「ドミートリイ」は、「フョードル」の三人の息子のうちでただ一人、自分には財産があるので、青年に達したら自立できるだろうと確信しきって育ったとのことですので、「ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ」が実家から引き取ったときに、そんなことを話したのかもしれませんね。

両親に見捨てられて幼年期を転々とした「ドミートリイ」は、精神的には不安定でしたが、財産があるということはただひとつの心の拠り所だったのでしょう。

そして、彼の少年時代と青年時代は乱脈に流れ去っていきます。

中学校中退→陸軍幼年学校に入学→コーカサスで軍務につき将校に昇進→決闘する→兵卒に降格処分→再度将校に復帰という具合です。

「さんざ遊びの限りをつくし、金づかいもかなり派手だった。」ということですので、無意識が相当に乱れていたのでしょう。

ドストエフスキーはこの章で「フョードル」に続いて「ドミートリイ」もかなり否定的に描いており、いいところは全く見えてきません。

成人に達した「ドミートリイ」は「フョードル」からお金を受けとるようになりますが、それまでに多くの借金を作っていました。

その後「ドミートリイ」は自分の財産に関して話し合いをするため「フョードル」に会いに行きます。

「ドミートリイ」は5歳前後くらいで「フョードル」のもとから出て行ったので、20年前後ぶりに父親に再開ということになります。

「ドミートリイ」が会いに来るまで、「フョードル」は子供に会いに行くこともなかったのです。


その時が「はじめて対面」と書かれており、これが実質的な初対面で、普通は父と子の感動的な場面になるのですが、全くそうでなくて結局、この父子はお金だけのつながりでしかなかったのです。


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