「ソフィヤ・イワーノヴナ」は「ごく幼いころからおどおどしどおしだった」と書かれています。
これは他人の家に引き取られ、強力な個性の継母に育てられたという環境の影響もあって仕方のないことかもしれませんが、彼女自身の生来の性格の方もあると思います。
彼女は結婚後、「癲狂病み(てんきょうやみ)」という「下層階級の農村の婦人なぞの間でいちばんよく見受ける、女性特有の一種の神経症とも言うべき病気」にかかりました。
「癲狂病み」とは聞きなれない言葉ですが、どんな病気でしょうか。
訳注では、「女性に多い強度のヒステリー発作で、発作の間じゅう病人は絶叫しつづける」と書かれています。
普段は素直でやさしく、清純で、清楚な容姿で、すばらしい美貌の持ち主である女性が、突然意識を失って絶叫しつづけるのですから、おそろしい病気です。
ドストエフスキーは、「癲狂病み」のことを「女性特有の一種の神経症」と書いていますが、男である自分自身もしばしば「てんかん」の発作におそわれて苦しんでいます。
この「てんかん」の発作と「癲狂病み」の症状はよく似ているのですが、同じ病気なのでしょうか。
「てんかん」と言えば最近では、車を運転中に「てんかん」の発作で意識を失い暴走する事故が多発して社会問題となっていますが、この場合の「てんかん」というのは、どういう病気でしょうか、調べてみると、 原因は様々で、脳腫瘍や頭部外傷後遺症などの明らかな原因がある場合は「症候性てんかん」、原因不明の場合は「特発性てんかん」と呼ばれるそうです。
ここで、「ソフィヤ・イワーノヴナ」の「癲狂病み」というのは、勝手に判断すれば、「特発性てんかん」に近いのではないかと思われますが、きっかけは、ずっと押さえつけられた精神的なものが、不本意な結婚生活のために増大し、行き場を失って爆発したのではないかと推測できます。
そして、これには、ロシア的と言われる歴史的風土的なものも関係しているのかもしれませんので、この「癲狂病み」には、重要な要素がたくさん含まれているような気がします。
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