前回、書いた三つの?のうちのひとつ。
「ドミートリイの頼みと用件」については、彼に関係する「ある重大な出来事」のことであると書かれています。
そして、「それがどういう出来事か、読者はいずれ詳細にいたるまで完全に知るはずである」と。
作者が言うように、これがこの小説の内容そのものなのです。
「イワン」はこの帰郷ではじめて「ドミートリイ」に会いました。
兄弟であっても母親が違いますし、特殊な事情のためまったく会うことはなかったのです。
しかし、「イワン」が「ドミートリイ」のことを知ったのは、もう少し前のことでした。
「イワン」はモスクワを発つ前から、彼と「重大な出来事」について手紙のやり取りをしていたそうです。
たぶん「ドミートリイ」の方からが少し有名だった「イワン」に接触したと思います。
しかし、「イワン」の存在を「ドミートリイ」に教えたのは誰でしょう。
「ドミートリイ」と敵対している「フョードル」が教えるということは考えにくいです。
そうなると、考えられるのは、この町に1年ほど前から暮らしているという三男の「アリョーシャ」が二人の対立を知り、次男の「イワン」に相談したのかも知れませんが、本当のことはわかりません。
ここで再び「わたし」の登場します。
前から何度も触れられていた「イワンの謎」についてですが、「わたし」があの「重大な出来事」に関する「特別な事情」を知ってからでさえ、「わたしにはイワンが謎の人物に思われたし、彼の帰郷もやはり説明しがたいものに思われていた」と。
「イワンの帰郷」の「謎」について作者の描写はしつこいくらいです。
前に「宿命的な帰郷」は「わたし」にとって、「その後永いこと、ほとんど終始、理解しえぬ問題でありつづけた」と書いています。
そして、その訳は「ドミートリイの頼みと用件」と種明かししています。
それでも、「わたしにはイワンが謎の人物に思われたし、彼の帰郷もやはり説明しがたいものに思われていた」そうですから、作者はよほど念入りに「イワンの謎」を読者に記憶させたかったのでしょう。
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