母「ソフィヤ・イワーノヴナ」の死後、二人の息子「イワン」と「アレクセイ」は従僕「グリゴーリイ」が面倒をみました。
先の妻がいなくなった際の長男「ドミートリイ」の時と同じです。
今回も父親である「フョードル」は二人の子供の存在を忘れてしまうのです。
この存在自体を忘れるということは、親として非情なことで、モノとして捨て去るということです。
また、存在を忘れられるということは、人間として死の宣告を受けたと同然のことです。
「ドミートリイ」は3歳の時から1年間、「イワン」は5~6歳の時から、「アレクセイ」は2~3歳の時から3ヶ月間「グリゴーリイ」が面倒をみたことになります。
ここでふたたび、「ヴォロホフ将軍の未亡人」が登場します。
「ソフィヤ・イワーノヴナ」の「恩人であり、養育者だった、わがままな老将軍夫人」です。
彼女は、「ソフィヤ・イワーノヴナ」が「フョードル」と結婚した時に、「二人を呪った」ほどでしたので、その執念深さがここで発揮されます。
彼女は「ソフィヤ・イワーノヴナ」がいなくなってから8年間ずっと「自分の受けた侮辱」を忘れることができず、《わたしのソフィヤ》がどのような生活をしているかについて「きわめて正確な情報をひそかに入手しており」、彼女が病気であることやら「フョードル」の破廉恥な行動などすべて把握していました。
そして、その「取り巻き連中」に「こうなるのが当たり前さ。恩知らずの罰を神さまがお下しになったんだよ」と口にしたそうです。
ここで老将軍夫人が「きわめて正確な情報をひそかに入手しており」ということが深刻でもあり、ある意味で滑稽でさえありますね。
彼女は密偵でも放っていたのでしょうか、そんなことは現実的ではありませんので、たとえば近所に知り合いがいて、定期的に情報を手紙で郵送するようにお金を払ってお願いしていたとかのほうが本当っぽいですね。
しかし8年間もずっと、相手にしられぬように、そっと覗きこむような、そんな一見して非生産的で趣味的なことをしていたというのが考えられませんが、人間の本性とはこういうことかもしれませんね。
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