「フョードル」が喋ると、真っ黒な虫歯の欠け残りが見え隠れする口元から、唾が飛びました。
彼は、まるで道化のようなところがあって、そんな崩れかけた容貌のことも冗談のたねにして、自分では満足しているようでした。
よくある自虐ネタというやつですね。
聞いている人の心を逆手にとって、本人はそのことに開き直っているようですが、変に内にこもるよりはいいかもしれません。
彼は、自分のあまり大きくなくて、非常に細くて、段になっていて目立つ鼻を指差して、「これが本当のローマ式の鼻だよ。これと咽喉仏が相まって、正真正銘の退廃期の古代ローマ貴族の風貌といえるんだ」とよく自慢していたそうです。
先に描写された「フョードル」の顔のイメージは、彫刻で見るローマ貴族の風貌とぜんぜん違うように思いますが、本人も「退廃期の」の言っていますので、まあいいでしょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿