2016年6月29日水曜日

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五 長老

この章は、「ゾシマ長老」の章ですが、今まで謎だった「アリョーシャ」の容姿の描写からはじまります。

まず、作者は読者に問いかけます。

今まで書かれていた「アリョーシャ」のイメージは、「異常なほど感激しやすい、発育の遅れた病的な性格の、青白い夢想家で、虚弱な痩せこけた人間であると、考える人がいるかもしれない。」と。

いやいや、若いのに、ちゃんと自分の考えを持ち、行動的で、人に優しく、思いやりがある立派な青年のように、思えますので、読者はそんな貧弱な様子なんて考えないのではないでしょうか。

そして、作者もそのように言います。

「むしろ反対にアリョーシャはこのとき、頬が赤く、明るい眼差しをした、健康に燃えんばかりの、体格のよい十九歳だった。」

さらに続けて、彼は美男子であり、中背で均整のとれた身体つきで、栗色の髪、いくらか面長で端正な瓜実顔、間隔の広くあいているダークグレイの目はかがやきを放ち、瞑想的な落ち着いた青年だったと書かれています。

ここまで、折りたたむようにしつこいほど描写されれば、読者の方も手に取るように印象づけられ、やっと、主人公らしくなってきました。


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