ここまでは、長老および長老制度の説明でしたが、次にやっと「ゾシマ長老」が登場します。
彼は、65、6歳で、地主の出身、若い頃は軍籍に身をおき、尉官としてコーカサスに勤務したこともありました。
「ドミートリイ」も地主の出身でコーカサスで軍務につき将校に昇進したのでしたね。
将校とは、広義には少尉以上の軍人を意味する士官の類義語だそうですから、士官の最下級であり、佐官の下、准士官の上に位置する尉官とどっこいどっこいでしょうか、関係ありませんが。
そして、「ゾシマ長老」は「何か一種特別な心の特質」で「アリョーシャ」を驚かせたのでした。
「アリョーシャ」は長老に非常に目をかけられ、長老の僧庵で暮らしていました。
しかし、「ここで指摘しておかねばならないが」と以下に続きます。
「アリョーシャ」は「この当時、修道院で生活はしていたものの、まだ何の束縛もなく」、何日でもどこへでも出かけられたし、僧服は自分が気に入って、そうしたいから身につけていただけのことでした。
つまり、まだ僧籍に入ったわけではなくて、中途半端な状態であったということですね。
たぶん、長老に気に入られているからこそ、その特権的な立場が許されたのでしょう。
「ゾシマ長老」には、力と名声があり、「アリョーシャ」もたしかにその影響を受けました。
長老については、多くの人が言っていることがあります。
彼は永年にわたって、心の秘密を告白しにやってきて、彼から忠告や治療の言葉を聞こうと渇望している人たちを近づけて、数知れぬくらいの打明け話や嘆きや告白を自分の心に受け入れたため、きわめて鋭敏な洞察力を身につけ、訪れてくる見ず知らずの人の顔をひと目見ただけで、どんな用件で来たのか、何を求めているのか、どんな悩みが良心を苦しめているのか、見ぬくことができるようになりました。
そして、訪問者が一言も話さないのに、相手の秘密を言いあてましたので、相手はびっくりし、うろたえて、時には怯えに近い気持ちさえ引き起こしたそうです。
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