このころ、ひとつの興味深いイベントの話が持ち上がりました。
言い出したのはもちろん「フョードル」です。
彼は、はじめはおそらく冗談まじりで言い出したことらしいのですが、「ゾシマ長老」の僧庵で家族会議を開こうということです。
「ドミートリイ」と「フョードル」は当時、遺産や財産上の勘定をめぐって争っており、それはどうしようもないところまできていました。
そして、二人の関係はとげとげしくなり、耐えがたいものになっておりました。
「フョードル」としては「ゾシマ長老」に直接の調停を頼まぬにしても、長老の前で話をすれば、彼の「位とか風貌」とかが何かしら和解的な、暗示的な効果をもたらすかもしれないと考えたのです。
まさに、彼らしい発想だと思います。
「フョードル」はそれまで一度も長老を訪れたことはなく、「ドミートリイ」の方は彼に会ったことすらありませんでした。
しかし、「ドミートリイ」は最近の父との争いにおける数々の乱暴な言動を少々反省していたこともあり、父が突然長老などを持ち出して自分を脅す気なのだろうとは思いつつ、この申し出を受け入れたのです。
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