2016年7月29日金曜日

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第二編 場違いな会合

一 修道院に到着

長老との面会の日がやってきました。

それは、八月の末、晴れわたったあたたかな日でした。

時間は、遅い朝の礼拝式のあと、ほぼ十一時半ごろと決められていました。

会合の参加者たちは、みんな礼拝式には参列せず、ちょうど終りごろに、二台の馬車で乗りつけました。

先頭の馬車は、高価な駿馬を二頭つないだハイカラな幌馬車で、「ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ」と彼の遠縁の二十歳くらいの青年「ピョートル・フォミーチ・カルガーノフ」が乗っていました。

ここではじめて登場する「ピョートル・フォミーチ・カルガーノフ」です。

「ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ」はどういうわけでか、彼をしばらく預かっていました。

そして、自分といっしょにチューリッヒかイェーナへ行って、そこで大学に入り、学業を終えるようにと彼に薦めているところでしたが、彼はまだ決心をつけかねていました。

彼は黙考型で、どこかぼんやりしているようでもありました。

容姿については、感じのよい顔だちで、頑丈な体格をしており、かなりの長身でした。

眼差しがときおり妙に固定することがあり、ひどく放心状態にある人のように、じっと永いこと見つめていながら、相手の姿なぞまるで目に入っていないことがときおりありました。

口数は少なく、いささか融通はきかぬほうではありましたが、だれかと一対一の時などは急におそろしく饒舌になり、興奮して、笑い上戸になり、時には何がおかしいのかわからないのに笑いくずれることもありました。

しかし、そのようなこともその生じ方が急激なのと同じようにすぐにふっと消えてしまうのでした。

彼はいつも立派な、垢ぬけた身なりをしておりましたが、すでにある程度の独立した財産を持っており、将来的にもさらに増えることが保証されていました。

「アリョーシャ」とは友達でした。


この会合の前日に「アリョーシャ」は「さる知人」を通して「ドミートリイ」に「言伝て」を送りましたが、「さる知人」というのは「ピョートル・フォミーチ・カルガーノフ」ではないでしょうか。


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