ここでやっと「ゾシマ長老」の登場になります。
彼は、見習い僧一人と「アリョーシャ」を従えて出てきました。
先ほどから部屋で待っていた司祭修道士は立ち上がり、指が地に触れるほど深いおじぎをしました。
そして、「ゾシマ長老」の祝福を受けて、長老の手に接吻しました。
「ゾシマ長老」は、「パイーシイ神父」にも祝福を与えました。
そして、二人に対して、それぞれ指を地に触れさせて深いおじぎを返し、自分のための祝福も一人ひとりに求めました。
この場面は、ロシア正教の内実を知らない者にとってはなかなか想像しがたいです。
こういった一連の行動は、毎日行われる礼式のような堅苦しさはまったくなく、まじめに感情を込めて行われていました。
「ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ」はいっしょに入った仲間たちの先頭にいましたが、彼にとってはこの儀礼的な行動はすべて意識的な演出で行われているような気がしました。
彼は、昨夜のうちから考えていたのですが、いかなる主義信条があろうともそれにかかわらず、ここではそれが慣習なのだから、単なる儀礼的な面から言っても、歩みよって、手に接吻はしなくとも、長老の祝福は受けるべきでした。
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