もう、そろそろこのへんで、「ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ」の堪忍袋の緒が切れます。
「フョードル・パーヴロウィチ、もうやりきれない!だって、自分がでたらめを言っていることや、そんな愚劣な一口話が嘘っぱちだってことくらい、自分でも知ってるはずでしょうに。何のつもりでそんな悪ふざけをするんです?」
「ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ」は、自分を抑えきれなくなって、ふるえ声で言いました。
ここで、「フョードル」の話した「ディドロ」の逸話が嘘で、それを本人がわかっていながら喋っているということを「ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ」以外の人はわかっていたのでしょうか?
「フョードル」は、「嘘だってことくらい、今までずっと感じとってましたよ!」と夢中になって叫びました。
そして、「わたしはね、みなさん、それじゃ真相をすっかりぶちまけましょう。偉大な長老さま、どうぞお赦しくださいまし。・・・」と、「ディドロ」の洗礼のくだりは、自分が今、話している最中に、はじめて頭に浮かんできて創作した、話を面白くするためのでっちあげであり、自分がこのような悪ふざけをするのは少しでも人気者になりたいためだと言います。
さらに、自分が人気者になりたいからからといっても、「時には自分でも何のためだかわからないところだってあるけど。」と、ある意味、正直に自分のことを吐露しています。
だいたい、「フョードル」という人物は正直は正直なのだと思います。
そして、彼は若いころ、ここの地主たちのところに居候していた時分に、あの《心狂える者》という話を二十遍ばかり連中からきかされて、「ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ」の伯母さんの「マーヴラ・フォミーニシナ」からもきかされたと言います。
さらに「あの人たちはみんな、無神論者のディドロがプラトン主教のところへ神を論じに行ったと、いまだに信じきってますからな・・・」と。
0 件のコメント:
コメントを投稿