三百キロも離れた場所からやってきた女に「ゾシマ長老」は、「町民階級のお方でしょうの?」と、興味深そうに、女の顔に見入りながら声をかけました。
「女の顔に見入りながら」というところは読み飛ばしがちなのですが、このような対面に慣れている「ゾシマ長老」の観察眼のするどい様子をさりげなく表現していると思います。
女は、自分は百姓の出であるが、今は町の人間で都会暮らしをしており、あなたさまの噂をきいて、お目にかかりに参りましたと、言いました。
そして、女は幼い息子の葬式をすませて、巡礼に出て、三つの修道院にお詣りし、「ナスターシュシカ」ここへ行くがよい、と教えられてここに来て、昨夜は宿坊に泊まり、今日こうしてあなたさまのところへ伺ったのです、と言いました。
「フョードル」一行を庵室へ案内した修道僧が「身分の高いご婦人方のためには」囲いの外に小部屋が二つ設けてあると説明していましたが、もうひとつは、「ホフラコワ夫人」と娘が泊まっていますね。
長老は、「何を泣いているのだね?」と女に問います。
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