四 信仰のうすい貴婦人
「遠来の地主夫人」と書かれていますが、これは「ホフラコワ夫人」のことです。
前の章のはじめにこの夫人と娘のことが紹介されていましたが、三日前にも長老に会っており、もう一度会うことを頼みこんでいました。
そして今、長老がやってきたので、宿泊している別室から廊下に出てきているのです。
「ホフラコワ夫人」は長老と民衆のやりとりをずっと眺め、静かな涙を流し、ハンカチでぬぐっていました。
彼女は心底善良で、感じやすい上流婦人でした。
長老が、やっとそばにくると、彼女は、あんな感動的な光景に接して感無量です、あなたが民衆に慕われているのがよくわかるし、わたし自身も民衆を愛しており、愛そうと望んでいる、偉大な中にも純朴なロシアの民衆を、と興奮した様子で言いました。
この夫人は上流階級ですので、言葉使いも今までの農婦たちと違って、丁寧です。
長老は、「お嬢さんの具合はいかがかな?また、わたしと話をなさりたいとか?」と問います。
三日前にも娘と話をしているのですね。
夫人は娘がまた長老と話をしたいと、僧院の誰かに頼み込んでいたのしょう。
夫人は、自分がわかままを言っておねがいした、会えるまで坐りこみを続ける覚悟でいた、「リーザ」をすっかり癒してくれたので自分たちはお礼の気持ちを伝えるために伺った、「木曜日にこの子の前でお祈りをあげてくださって、お手を頭にのせてくださっただけで。」、自分たちはあなたの手に接吻して今のこの気持ちと敬虔の念をあらわそうとやってきた、と。
娘の名前が出てきました。
「リーザ」と言うのですね。
木曜日に長老と会った言っていますので、今日は日曜日ということです。
長老は、お嬢さんは相変わらず車椅子を使っておいでのようだが、癒したとはどういうことですか、聞きます。
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