「ホフラコワ夫人」は「ゾシマ長老」のおかげで、娘がどのように癒ったのか説明をします。
「ゾシマ長老」が手を娘の頭にあてて祈ったのが木曜日のことで、それからもう二昼夜も夜中の高熱がなくなり、そのうえ、足もしゃんとしてきたし、昨夜はぐっすり眠れて、今朝は元気に起きてきた、頬の赤みや目のかがやきをごらんになってやってください、いつも泣いてばかりいた子が今では笑い声をあげて、明るく嬉しそうにしている、今日はどうしても立たせてみてほしいと言い張って、まる一分間もひとりで立っていた、二週間もするとカドリールを踊れるようになるなんて自分と賭けまでした、ここの医者の「ヘルツェンシトゥーベ先生」を呼んだら、ふしぎだ、信じられんと言っていた、「リーズ(訳注 リザヴェータの愛称をフランス風に発音したもの)」お礼を申しあげるのよ、と。
なんだか、娘の治癒の仕方が信じられないような気がするのですが、このすぐあとの展開から考えると、より眉唾的な感じがしてきます。
そのように思わせるのも作者の意図するところでしょう。
そして、この町の医者「ヘルツェンシトゥーベ先生」を呼んだと言っていますので、この娘はこの医者に診てもらっていることがわかります。
これは、前の章で「・・・むしろ用事ですでに一週間くらいこの町で暮らしているのだが・・・」とありましたが、このことだったのかとここで気づきます。
さらに、「・・・母親はもう春ごろから外国へ連れてゆくつもりでいたのだが・・・」と書かれてあったのは、外国の医者にも診せようという計画があったことが、予想されてはいたのですが、ここでのみごとな伏線となっていて、より読者は確信を得るのではないでしょうか。
そして、「カドリール」というのは、ここでは、一八世紀から一九世紀にかけてフランスを中心として流行した舞踊で、4組の男女のカップルが四角い形を作って踊る活発なダンスだそうですが、フォークダンスの中にもとりいれられていて、活発というより今ではむしろ優雅なダンスです。
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