2016年9月27日火曜日

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娘はなぜか笑っていましたが、母親から「ゾシマ長老」にお礼を言うように言われて、そのかわいい顔が急にきまじめな風になり、車椅子の中で身を起こし、長老を見つめながら小さな両手を組んだのですが、こらえきれずにいきなり笑いくずれました。

「リーザ」はまだ十四歳なので突然笑ったりするのも無理もありませんが、ここですでに彼女の、感情が先走りする性格の一部が描写されています。

彼女は、自分がこらえきれずに笑ったことに対する、自分への稚い憤りをこめて、自分が笑ったのは、あの人のこと、つまり「アリョーシャ」のことだと言って彼を指さしました。

指差された「アリョーシャ」は、一瞬のうちにみるみる頬を赤らめたそうです。

そして、彼の目がきらりとかがやき、伏せられたと書かれていますが、もうここで、「リーザ」と「アリョーシャ」の関係が何となくわかるように思います。

今度は、「ホフラコワ夫人」が喋ります。

「アレクセイ・フョードロウィチ、この子はあなた宛に用事をことづかってますのよ。ご機嫌はいかがですの?」と、そう言って、夫人は「アリョーシャ」に顔を向け、手袋で美しく包んだ手をさしのべました。

長老はふりかえって、ふいに注意深く「アリョーシャ」を見つめました。

「ホフラコワ夫人」は機転をきかせ、娘を助けて、言葉をかけたのでしょう、そして、長老は「ふいに注意深く」「アリョーシャ」を見つめたと書かれてありますので、ふたりのことは見抜いており、「アリョーシャ」の修道院生活の遺憾も考えたのかもしれません。

「ホフラコワ夫人」と「リーザ」はすでに「アリョーシャ」と面識があったのですね。

「アリョーシャ」は「リーザ」に歩みより、なんとなく奇妙な、ばつの悪そうな薄笑いをうかべながら、彼女に手をさしのべました。

「リーズ」はもったいぶった顔になって、「カテリーナ・イワーノヴナ」からことづかってきましたと、小さな手紙をさしだし、「カテリーナ・イワーノヴナ」ができるだけ早くに「アリョーシャ」に来てほしいと、すっぽかさないで、必ず来てくださいとの伝言を伝えました。

「リーザ」と「リーズ」、場所によって呼び方が使い分けられているようです。

一方「アリョーシャ」は、どうして「カテリーナ・イワーノヴナ」が自分に来てほしいというのか、腑に落ちないようです。

「なぜだろう?」と深いおどろきをこめて「アリョーシャ」はつぶやきました。


そして、その顔が急にひどく気がかりそうになりました。


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