「ゾシマ長老」は、申しわけないのですが待っている人がいるので、いずれまた、と言って立ち去ろうとしました。
待っている人というのは、庵室の一行のことです。
「ホフラコワ夫人」は感動で泣いていましたが、ふいに全身をふるわせて「リーズ」に祝福を与えてください、と言いました。
すると、「ゾシマ長老」は、いや、その子はずっとふざけていましたので愛に値しませんよ、どうして「アレクセイ」をからかっていたのです?と、冗談まじりに言いました。
実際に、「リーズ」はこのいたずらにかかりっきりだったのです。
どのようないたずらでしょうか?
彼女は、ずっと以前に「アリョーシャ」に会ったときから、彼が自分を見るとどぎまぎし、見まいと努めているのに気づいていたし、それがたいへんおもしろかったのです。
彼女はまじまじと相手の視線を待ち、捉えようとするのでした。
そうすると「アリョーシャ」は執拗に注がれている眼差しにこらえきれず、抗しきれぬ力に負けて心ならずも彼女に視線を合わせます、それで彼女は勝ち誇ったような微笑をまっすぐ彼の目に送るのでした。
「アリョーシャ」はどぎまぎし、腹立たしく思い、ついにはすっかり顔をそむけて、長老の背後に隠れてしまいましたが、二、三分するとまた、さっきの抗しがたい力に引きずられて、自分を見ているかいないか確かめようとふりかえりました。
「リーズ」は車椅子からほとんど身を乗りださんばかりにして、横から彼の方をのぞきこみ、彼がふり向いてくれるのを一心に待っていました。
そして、彼の視線を捉えると、長老さえこらえきれなくなったほど、大きな声で笑いくずれたのでした。
「リーズ」は少し前も笑いくずれていましたが子供ですね、まだ14歳ですから。
「ゾシマ長老」は「どうしてこの青年をそんなに恥ずかしがらせたりするのです、お茶っぴいさん?」と言います。
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