「それが父親に、父親に向って言う言葉か!ほかの人が相手だったらどうなるんだろう?」と「フョードル」は怒りをあらわにします。
そして、仕返しのつもりかもしれませんが、「そうなんですよ。みなさん。」と、今度は周りのみんなに向って語りかけます。
「フョードル」は続けてこんなことを暴露します。
この町に貧乏ではあるが、立派な退役大尉がおり、彼は不運にも軍務を退かされたのですが、といっても公表されたわけでも、軍法会議にかけられたわけでもなく、名誉は立派に保っているのですが、今は大家族を背負いこんで苦しんでいます。ところが三週間前、わがドミートリイ君が飲屋でこの大尉の顎ひげをふんづかみ往来に引きずりだすなり、公衆の面前でさんざんに殴りつけたんです。それもこれも、その人がちょっとした用件でわたしの私的な代理人をつとめたというだけのことでですから、と。
「ドミートリイ」は「嘘です、そんなことはみんな!うわべは本当でも、中身は嘘っぱちです!」と、怒りに全身をふるわせました。
そして、今度は「フョードル」の秘密を暴露します。
自分は自分の行為を弁解しない、みんなの前で正直に言う。たしかに自分はその大尉に野獣のような振舞いをした。そして、今ではあの野獣のような振舞いを後悔していて、やりきれないくらいだ。しかし、あの大尉つまりあんたの代理人は、あんたが妖婦と表現した女性のところへ行って、自分が財産の清算のことであなたにしつこくつきまとうなら、あんたが持っている自分の手形を彼女が引きとって、その手形をたねに自分を刑務所へぶちこんでしまえるように訴訟を起こしてくれと、あなたの頼みを伝えました。それから、自分があの女性にぞっこん参っていると非難したが、自分を誘惑するように彼女に焚きつけたのはあなた自身だと、彼女はあなたを笑い者にしながら自分に話してくれました。あなたが自分を刑務所にぶちこみたがっているのは、自分に嫉妬しているからだ。自分はわかっているのだが、あなたは彼女に岡惚れしていい寄っているじゃありませんか。これも彼女があなたを笑いものにしながら話してくれました。「どうですか、神父さまたち、これが放蕩息子を難詰している父親なんですよ!みなさん、僕が怒ったのを赦してください。」と、そして、自分はこの抜目ない爺がみなさんをここへよび集めたのは、スキャンダルを起すためだと予感していた。自分は、もし父が手をさしのべたら赦し、自分も赦しを乞うつもりで来たのです!でも、父が今、自分だけでなく、自分が敬虔の念からみだりにその名を口にすることさえはばかっている高雅な令嬢のことまで侮辱したために、たとえ父親であろうと、その企みを残らずみんなの前にあばこうと決心したんです!、と。
「フョードル」が仕込んだ手形の一件はよくわかりませんが、「妖婦」をめぐって「フョードル」と「ドミートリイ」の三角関係が暴露されましたね。
「ドミートリイ」は短気で乱暴者ですね。ただ、「フョードル」と違って自分自身に対して正直であるとは思います。
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