「ラキーチン」の男女の関係についての見解を聞かされた「アリョーシャ」ですが、「それは僕もわかると」と、ふいに口をすべらせました。
その言葉を聞いた「ラキーチン」は「ほんとかい?一言のもとに僕もわかるなんて口をすべらせたからには、つまり、本当にわかるってわけだ」と、小気味よさそうに言いました。
「ラキーチン」はまるで「アリョーシャ」の弱点を見つけたかのように、その発言にこだわり、相手の弱みを握って有利になった人間が得意がってたたみかけるように会話を続けます。
これから、「ラキーチン」の話す内容は、この物語のここまでの大筋のわかりやすい説明になっています。
彼は「グルーシェニカ」の関係でこれからもちょこちょこ登場するのですが、作者は彼にこの物語の大筋の説明させて読者を本筋からそれないように集中させるという重大な役割を課せるための脇役として創作したのではないでしょうか。
「ラキーチン」の話は続きます。
君はうっかり口をすべらせて本音を吐いたのだから、その発言はなおさら値打ちものだ、要するに君にとっては、すでにお馴染みのテーマで、つまりそれは情欲ということについてなのだが、そんなことを自分ですでに考えていたんだね、いや、「アリョーシャ」、君はたいした純情坊やだな!君はおとなしい人間で聖人君子だということに異存はないが、しかし、何を考えているのかわかったもんじゃない、どこまで知っているのか見当がつかない、純情坊やのくせにもうそんな深淵を通りぬけている、自分はずっと前から君を観察しているが、「君自身もやっぱりカラマーゾフだよ、完全にカラマーゾフだ。要するに、血筋がものを言うってことだな。」、父親譲りの色好みで、母親譲りの神がかり行者ってわけだ、どうしてふるえているんだい?僕の言うとおりなんだろ?、と。
そして、続けて「あ、そうそう、グルーシェニカに頼まれてたんだ。『あの人を』つまり君のことだぜ『あの人を連れてきてよ、あたし僧服をぬがせてみせるわ』だとさ。連れてきて、連れてきて、そりゃしつこく頼んでたぜ。」と、そして、自分はいったい君のどこがそんなにあの人の興味をひくんだろうと、あの人だってめったにいないほどの女性だからね!、と。
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