さらに「ラキーチン」の話は続きます。
「ドミートリイ」と「フョードル」の間にたった「グルーシェニカ」は「どっちにも色よい返事をせずに、今のところまだのらりくらりと二人を適当にあしらいながら、どっちが得かを観察している状態だよ。」、なぜかというと親父さんからはごっそりお金を搾り取れるだろうが、その代り結婚してくれそうもないし、おそらく最後にはがめつくなって財布を閉ざしてしまうだろうし、そうなれば、「ミーチャ」もすてがたく、お金はないが、結婚はできるだろうから、金持で貴族で大佐の娘で無類の美人であるいいなずけの「カテリーナ・イワーノヴナ」を棄てて、老いぼれ商人で身持のわるい土百姓の町長「サムソーノフ」風情の妾だった「グルーシェニカ」と結婚することになる、「こうしたいっさいのいきさつから、ほんとうに犯罪がおこりかけないんだ。また、それを待っているのが君の兄貴のイワンさ。そうなりゃ濡手で粟だもの。恋こがれているカテリーナ・イワーノヴナもいただけるし、六万ルーブルという持参金もがっぽりだ。」と、そして「イワン」のような無一文の男にとっては、幕開きとしてはきわめて魅力的な話であるし、見落としてはいけないことは、そうなれば「ミーチャ」を傷つけることはないし、死ぬまで恩を売ることにさえなる、というのは自分は先週「ミーチャ」が飲屋で酔払ってシプシー女たち相手に大きな声でいいなずけの「カテリーナ」は俺にはもったいない女だ、弟の「イワン」なら似合いの相手だとわめいていたのを知っているから、当の「カテリーナ・イワーノヴナ」にしても「イワン」ほどの魅力的な男なら最後には拒みきれなくなるだろう、現に今でも二人の間でぐらついているくらいだから、それにしてもあの「イワン」て男のどこが君らみんなを惹きつけたのかわからないが、彼は君らをせせら笑って濡手で粟で、勘定はそっちもちで甘い汁を吸わせてもらうぜと言わんばかりだ、と。
これで、ひとまず「ラキーチン」の大胆な発言は一区切りです。
彼は「グルーシェニカ」のところに出入りしているので、彼女が「どっちにも色よい返事をせずに、今のところまだのらりくらりと二人を適当にあしらいながら、どっちが得かを観察している状態だよ。」というのは信憑性があります。
また、「イワン」が「カテリーナ・イワーノヴナ」に恋こがれているということもここではじめてわかりました。
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