2016年12月19日月曜日

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八 恥さらしな騒ぎ
ここで、「ミウーソフ」と「イワン」が会食のために修道院長のところへ入って行く場面まで時間がさかのぼります。

「ミウーソフ」について、彼は根は上品でデリケートな人間です、ということで、修道院長のところに入っていくころには、心の中にあるデリケートな変化が急速に生じ、腹を立てているのが恥ずかしくなってきました。

何となく、このような気持ちの変化はよくわかります。

「ミウーソフ」は、あんなやくざな「フョードル」なんかは、尊敬しないのは当たり前のことで、さっきのように、長老の庵室で冷静さを失ってわれを忘れたりすべきでなかったと思いました。

『少なくとも修道僧たちには、この場合なんの罪もないんだ』と、院長の住居の表階段で、ふいに彼は結論を下しました。『ここにだってまともな人たちがいるとしたら(修道院長のニコライ神父も、確か、貴族の出だったな)、その人たちにやさしく、愛想よく、いんぎんに接していけない理由はあるまい?議論はよそう。いっそ相槌ばかり打って、愛想のよさでひきつけておいて、それから・・・そう・・・最後には、俺があんなイソップ爺の、あんなピエロん仲間じゃなく、みんなとまったく同じように不愉快な思いをさせられたんだってことを証明してやろう・・・』

自分の行為を反省したまでは、よかったのですが、やはり、彼の考え方には少し問題があるようですが、しかし、日常生活における人間の心理というのは、大体がこういう陳腐なものかもしれないとも思わせてくれるような描写です。


そして彼は、係争中の林の伐採権や漁業権、そんなものがどこにあるのか自分でも知らなかったのですが、それらを今日にでもきっぱりと永久に譲ってしまおう、そんなものは取るに足りぬほどの値打ちしかないのだし、修道院相手の訴訟も全部打ち切ろう、と決心しました。


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