2016年12月26日月曜日

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何かやらかしてやろうと決心した「フョードル」が修道院長の食堂に姿をあらわしたのは、お祈りが終ってみなが食事に移ろうとしたその瞬間でした。

彼は戸口に立ちどまって、一同を睨めまわしまし、そして、みなの目を不敵に眺めながら、ふてぶてしい、憎たらしい長い笑い声をたてました。

彼は「みんな、俺が帰ったと思ってるらしいが、ほら、やってきたぜ!」と、広間じゅうにひびく声で叫びました。

何ともはや、大変なシーンになったわけですが、この場に「アリョーシャ」がいなくて幸いだと思います。

一瞬、だれもが戸口に立った「フョードル」をまじまじと見つめて、沈黙し、ふいにみなが、今すぐ疑いもなく恥さらしな騒ぎをともなう何か愚劣な、うとましいことが持ちあがるにちがいない、と感じました。

「ミウーソフ」は、この上もなく柔和な気分から、とたんに、きわめて凶暴な心境に変りました。

心の中で火を消し、静まっていたものがすべて、いっぺんによみがえり、頭をもたげました。

ということは、「ミウーソフ」が心を入れかえて神妙な気持ちになったというのは、「フョードル」がいないことが前提だったのですね。それは、まったく本心からの反省ではなかったようです。

この場でも作者は「ミウーソフ」を茶化していますが、「フョードル」もずっと「ミウーソフ」を茶化し続け、同じく作者も「ミウーソフ」を茶化すような表現を続けています。つまり、作者は「フョードル」に同化して、彼のようなインテリを茶化しているのかもしれません。

「ミウーソフ」は、「だめだ、こんなことを僕は我慢できない!」と叫び、「とうてい、できん・・・絶対にできるものか!」と。

血が頭にのぼりました。舌がもつれましたが、もはや言葉なぞにかまっておられず、彼は帽子をひっつかみました。


そこで、「フョードル」が「この人はいったい、何ができないって言うんです?」とわめき、「『とうていできん、絶対にできるもんか』だなんて。院長さま、入ってもいいですか、それともだめですか?お相伴させていただけますかな?」と。


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