君の家庭に犯罪が起こる、と言われた「アリョーシャ」は釘付けされたように立ちすくみ、再び「何の犯罪さ?人殺しって、だれのことだい?君は何を言ってるの?」と、立ちどまった「ラキーチン」に問います。
「ラキーチン」は、「だれのこと?知らないみたいに言うじゃないか?賭けてもいいけど、君自身このことを考えてみたはずだぜ。それはそうと、こいつはおもしろいぞ。あのね、アリョーシャ、君はいつもどっちつかずの煮えきらぬ態度をとりはするけど、常に本当のことしか言わない人間だ。答えてごらん、君はこのことを考えたことがあるかい、それともないのかい?」
「あるよ」と、「アリョーシャ」が低い声で言いました。
さすがの「ラキーチン」もうろたえました、そして、「何だって?本当に君も考えたことがあるのかい?」と叫びました。
「僕は・・・考えたってわけじゃないけど。君が今あんな妙な言い方をするもんだから、こっちまで考えたことがあるような気がしたんだよ」と、「アリョーシャ」はつぶやきました。
この「アリョーシャ」のつぶやきは何なのでしょうか、答えになっていませんし、次の「ラキーチン」の発言からみても、このつぶやきはたんなる内心の声といったところでしょうか、それにしても「ラキーチン」の言うように「どっちつかずの煮えきらぬ態度」です。
「ラキーチン」は「ほらね、君は実に明確に表現したもんだね、どうだい?今日、親父さんと兄貴のミーチャを見ているうちに、君は犯罪のことを考えたってわけだ?してみると、僕の思い違いじゃないんだね?」と言いました。
「明確に表現した」と言うのは、「アリョーシャ」がひとこと言った「あるよ」という言葉でしょうから、次のつぶやきの部分、つまり、「考えたことがあるような気がした」というところは飛ばされています。
だから、「アリョーシャ」は「まあ、待ちたまえ、待ってくれよ」と不安そうにさえぎりました、そして、「いったいどうして君にはそんなことがすべてわかるの?なぜこんなことに、それほど関心があるんだい、これが第一の問題だよ」と言います。
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