2017年1月25日水曜日

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「彼が恐れたのは、まさにほかならぬカテリーナという女性だった。」

「アリョーシャ」は、はじめて会ったときから彼女がこわかったのです。

「彼女に会ったのは全部で一、二度、多くても三度くらいだし、一度は偶然にいくつか言葉をかわしたことさえあった。」と書かれていますが、「リーザ」から手紙を渡された時に「アリョーシャ」は「あの人に会ったのは、たった一度だけなのに」と言っています。

「アリョーシャ」にとって彼女の面影は、美しい、気位の高い、高圧的な娘として印象に残っていました。

「しかし、彼を苦しめていたのは、彼女の美しさではなく、何かほかのものだった。つまり、自分の恐怖を説明できぬことが、今その恐ろしさをいっそう強めていた。」

「あの令嬢の目的がきわめて立派なものであることは、彼にもわかっていた。」

「彼女はすでに自分に対して負い目のある兄ドミートリイを救おうと熱望しているのだし、それももっぱら寛大な気持からにほかならなかった。」

「そして、それを認め、そうした美しい寛大な気持を正しいものと見なさずにはいられなかったにもかかわらず、彼女の家に近づくにつれて、背筋を寒気が走りぬけるのだった。」

「アリョーシャ」のそれほどまでに強い恐れというのは、興味深いものがありますが、それは、「アリョーシャ」自身が自分の中にある正義というものに対する違和感のようなものを感じているからであり、彼女の中にある正々堂々とした正義、それは実際には推測できず正体不明ですが、その名実ともに完璧ないわば大上段としての正義に対して、彼の孤独の闇の中から根付いて成長したような小さな正義は太刀打ちできないように思うからではないでしょうか。


ときどき、今、現状はいったいどんな状況なのかわからなくなってきますが、「アリョーシャ」は修道院長に食堂での大騒ぎのことを聞き、その足で、自分はある決心をしたので今すぐ来てほしいという「カテリーナ」の家に向かっている途中です。


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