「彼女と非常に親しい兄のイワンに、彼女の家で出会うはずはないと、彼は判断した。兄のイワンはきっと今、父と一緒にちがいない。」
ここで、急に「イワン」が「カテリーナ」と「非常に親しい」ということになっていますが、どれくらい親しいのでしょうか。
少し前、修道院長のところへ行く道の途中で「アリョーシャ」は待ち伏せしていた「ラキーチン」に会い、その道々彼に聞いてはじめて「イワン」と「カテリーナ」に関することを聞いたわけで、それも「カテリーナ」の家に「ドミートリイ」と「イワン」が一緒にいたというだけのことであり、特にふたりが好き合っているということではなかったのですが、「ラキーチン」の「イワン」に対する嫉妬めいた話し方によってそう判断したのでしょうか。
そして、「イワン」は「フョードル」と同時に馬車で家に帰ったのを目撃していますので、途中で「カテリーナ」のところに寄ったりはしないでしょう。
「ドミートリイに出会わぬことは、いっそう確かだった。彼にはその理由も予想できた。」
「ドミートリイ」は、罵り合いの末、「ゾシマ長老」から足もとへの跪拝を受け両手で顔を覆って、一足先に部屋を飛びだしましたから、そんな状態でわかれようとしている女性のところへは行かないでしょう。
しかし、ここで、「アリョーシャ」が確信をもってそう思える理由というのは、別にあるのでしょうか。
「とすれば、二人の会話は差向かいで行われることになる。」
「その宿命的な会話の前に、ぜひともドミートリイのところに駆けつけて、会っておきたかった。」
「宿命的な会話」とまで書かれていますが、「カテリーナ」が決心したというその話は、いったいどんな話でしょう。
少なくとも「アリョーシャ」はどのような話がなされるのか予想しているから「ドミートリイ」に会った方がいいと思ったわけで、感のいい人はわかるかもしれませんが、私にはわかりません、というか忘れてしまっています。
「アリョーシャ」は、自分がもらった手紙を見せないで「ドミートリイ」と何かしら言葉を交わせるのではないかと思いました。
事前に「ドミートリイ」の意向を聞いていた方がいいと思ったのでしょう。
しかし、「ドミートリイ」の家は遠かったし、それに今ごろはやはり家にいないだろうと思いました。
なぜ、今ごろ、つまり昼食時間の終わった午後ですが、「ドミートリイ」が家にいないと思うのでしょう。
そもそも「ドミートリイ」は働いているのでしょうか、それとも毎日のように飲み屋で飲んでいるのでしょうか。
「アリョーシャ」は一分ほどその場にたたずんでから、ついに最後の肚を決めました。
「習慣的なあわただしい十字を切り、すぐに何事かほほえむと、彼は恐ろしい令嬢の家に毅然とした足どりで向った。」
「アリョーシャ」は「カテリーナ」の家は知っていました。
しかし、広小路に出て、それから広場などを突っ切っていたのでは、かなり遠くなります。
小さな町なのですが、あちこちに広がっていましたので、道のりもかなり遠い場合があるのです。
それに、父「フョードル」も「アリョーシャ」が修道院から引き上げて家に帰ってくるのを待っているはずです。
もしかして、先ほどの命令をまだ忘れずに、気まぐれを起こしかねなかったので、そちらの方へも間に合うように急がなければなりませんでした。
「先ほどの命令」とは、父親の権利で今日限り永久に引きとるということですが、これで一件落着とはいかずに、また修道院に対して何かしかけるかもしれないとでも思っているのでしょうか。
ここでは、とにかく早く、なにごとも急がなければならなかったということです。
そして「アリョーシャ」は、裏通りづたいに近道することに決めました。
そういう抜け道なら、五本の指のようによく知っていました。
裏通りづたいということは、荒れはてた塀に沿ってほとんど道のないところを行くことで、ときにはよその生垣を乗りこえたり、よその庭先をぬけたりしなければなりませんでした。
どうして「アリョーシャ」はそんな裏道をよく知っていたのでしょうか。
町のだれもが「アリョーシャ」を知っていて、挨拶をかわす間柄ではありましたが。
この道なら、広小路へ出るのに半分は近くなると「アリョーシャ」は思いました。
しかし、少し前に「広小路に出て、それから広場などを突っ切っていたのでは、かなり遠くなる。」と書かれてありましたので、裏道を通る近道は広小路に出るまでで、そらから広場を突っ切るのですね。
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