2017年1月27日金曜日

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裏道の途中に一箇所、父の家のすぐ近く、それも父の庭と隣合っている、窓の四つついた、古めかしい小さな、傾きかけた家のわきを通ることになっていました。

「アリョーシャ」の知っているかぎりでは、この町の町人で、娘と二人で暮らしているいざりの老婆でしたが、この娘というのが、首都でハイカラな小間使などして、つい最近まで将軍のお屋敷ばかり渡り歩いていたような女で、老婆の病気のためにもう一年ほど前に帰郷してきたものの、いつも贅沢な服を着飾っていました。

介護離職ですね。

しかし、老婆と娘はひどい貧乏に落ちこみ、隣家のよしみで毎日「フョードル」の台所へスープとパンをもらいにくるほどでした。

「マルファ」はこころよく取り分けてやっていました。

しかし、娘は、スープをもらいにくるほどでしたが、服は一枚も売ろうとしなくて、そのうちの一着などはやけに長い裳裾さえついていました。

こんな事情を「アリョーシャ」が知ったのは、もちろんまったく偶然になのですが、町のことならおよそ何でも知っている親友「ラキーチン」に聞いたからでしたが、それで知りはしましたが、忘れていました。

「ところが、今、隣の庭のところまでくると、ふいにこの裳裾のことを思いだしたので、考えに沈んでいた頭を急いで起し・・・突然、まったく予想もしなかった対面にぶつかった。」


「ドミートリイ」でした。


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