2017年2月10日金曜日

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四 熱烈な心の告白-異常な事件によせて

「ドミートリイ」は自分で言うように、やっと本題に入ります。

「向うで俺はよく遊んだものさ、さっき親父は、俺が若い娘をたらしこむのに何千ルーブルずつも使ったなんて言ってたな。あれは下劣な妄想で、一度だってそんなことはなかったよ。あったとしても、だいたい《あのこと》に金なんぞ必要としなかったしな。俺にとって金なんぞ、アクセサリーさ、魂の熱気だよ。小道具なのさ。今日、レディが俺の彼女でも、明日は町の売春婦がその後釜という寸法だ。俺はそのどっちも楽しませてやるし、金は湯水のようにばらまく、やれ音楽だ、どんちゃん騒ぎだ、ジプシーだって具合にな。必要なら、女にも金をやるさ。なぜって受けとるからな、こいつは白状せにゃならんけど、目の色を変えて受けとるもんだぜ、それで喜んで感謝するしさ。貴族の奥さんたちも俺を愛してくれたっけ、みんながみんなというわけじゃないが、ちょいちょいそんなことがあったよ。」

「ドミートリイ」の会話はまだ続きますが、長いのでここで一旦切ります。

ここまでは、彼の自慢話です。

「向うで俺はよく遊んだものさ」というのは、軍務につき将校になったコーカサスのことでしょうか。

そして、「さっき」「フョードル」に言われたことを否定しています。

「さっき」と言ってもここまで長い文章が続いていますので、なかなか実感がわかないのですが、あの修道院の騒ぎからわずか二~三時間しかたっていないでしょう。

もしかするともっと短いかもしれません。

とにかく、その時「フョードル」は「ドミートリイ」について「前に勤務していたところでは、清純な娘さんを誘惑するのに、千の二千のと札びらを切ったものだし」なんてことを発言おりますし、さらに「ドミートリイ君、すっかりばれてるのだよ、ごく内緒の細部にいたるまでね。証明してみせようか・・・」とはったりまできかせています。

また、「ドミートリイ」は自らの金銭感覚を披露していますが、生活のために苦労してきた「イワン」が聞いたら驚くことでしょう。

要するにお金のことは、徹底的に馬鹿にして、自分はそんなものには執着していないし、お金がなくても女性にもてたということが言いたいのでしょう。


逆に言えば、金離れがいいから女性にもてていたとも言えるのですが、本人はぜんぜんそんなことには気がついてないようで、「こいつは白状せにゃならんけど」云々などと、一般常識からかけ離れた能天気なことを言っています。


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